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Nov 01 / 2013
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解雇規制を撤廃、雇用制度を自由化し、労働行政を簡素化せよ! 100の行動42 厚生労働8

初稿執筆日:2013年11月1日

第二稿執筆日:2015年10月28日

 2015年8月の完全失業者数は225万人、完全失業率は3.4%だった。一方で、雇用者(5267万人)のうち、非正規の職員・従業員は1953万人となり、非正規比率は37.1%と過去最高の水準となっている。

 バブルが崩壊した直後の1992年における非正規社員数は、958万人、正規雇用の社員は3705万人であった。つまり、20年間で非正規社員は1000万人増え、正規社員は500万人も減ったのだ。

 これは、不景気にあえぐ企業が雇用の調整弁として、解雇しやすい非正規社員に流れたことが主な要因だろう。正規社員を守る厳しい労働規制のために、逆に正規社員になれる人を少なくしてしまった構造だ。

 日本経済の成長を支えるには、成長産業への円滑な労働力の移動を可能にする労働規制が不可欠だ。日本経済の復活に向けて、政府は行き過ぎた雇用維持政策から政策転換し、労働市場を流動化・活性化させる労働規制に舵を切るべきだ。

解雇規制を撤廃せよ!

 日本における解雇規制に関して、そもそも労働基準法ではほぼ解雇自由の原則であるものを、判例法を中心に「解雇権濫用法理」が構築されていき、2008年に成立した労働契約法第16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められるに至っている。

 この厳しい解雇規制のために、企業は業績が悪化し、「整理解雇の4要件」((1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)対象者の人選の合理性、(4)手続きの妥当性)を満たさなければ解雇できない。このため、正社員の雇用を控え、非正規雇用を増やさざるを得なくなっているのだ。

 すなわち、現状の解雇規制は、厳し過ぎる規制のために本来増やそうとしている正規雇用を減らしているのだ。さらには、日本の企業の99%を占める中小企業で働く労働者には、そもそもこういった規制の恩恵は届いておらず、むしろ中小企業の社員は十分な金銭補償すらなく自由に解雇されてしまうことも問題である。

 したがって、労働契約法に企業の解雇権を明記し、正社員でも金銭補償によって解雇できる制度とすべきだ。そうすれば中小企業で働く人にとっては、むしろ解雇される場合に法律上金銭補償の義務が企業に課されるという規制強化の恩恵を受けることができるし、大企業にとっては非正規の派遣社員等を雇用の調整弁として利用する必要がなくなり、正社員の雇用を増やすことができるわけだ。諸外国では、例えばドイツの12~18カ月、イタリアの15~27カ月といった例もある。

 もちろん、いつでも気楽に解雇ができるというわけではなく、正当な理由は必要であろう。しかし、本来企業は、利益が出ている時にこそ攻めの業態変換やリストラが必要である。金銭補償による解雇が認められれば、攻めのリストラが可能となり、経営上の自由度が高くなる。

 企業の解雇権を認め、金銭補償による解雇を可能とすることは、正規・非正規の格差問題、大企業・中小企業の格差問題を解消するための第一歩である。

契約社員、派遣社員の雇用期間制限を撤廃せよ!

 正規・非正規の格差を解消するための第2は、労働者派遣法や労働契約法による、非正規雇用に関する規制を緩和することだ。

 契約社員は、労働契約法によって最長5年の期限が定められている。労働者派遣法にいたっては、法律の目的が、「常用代替の防止」、つまり「派遣社員が正社員の仕事を奪わないこと」とされている。この立法趣旨はナンセンスである。そのために通訳や秘書などの専門26業務を除き、派遣労働を原則として最長3年に限定している。契約社員にせよ、派遣社員にせよ、企業と労働者との契約関係については原則自由化すべきであろう。

 確かに、立場の弱い労働者を守る必要はあるかもしれないが、これまでの規制手法は、派遣労働者や契約社員を守るというよりも、むしろ彼らの働く機会を奪う結果となっている。それならば、正社員への解雇権を認め、非正規雇用に対する各種の規制を取り払い、その上で3.で後述するように年功賃金ではなく、同一労働同一賃金の能力給に移行すれば、正規と非正規の壁は無くなっていく。労働規制は、企業と労働者との契約関係に任せて原則自由化し、できる限り簡素で分かりやすい仕組みに改めるべきだ。

2015年9月に労働者派遣法の改正が実現し、これまでは、通訳や秘書などの専門26業務という区分及び業務単位での期間制限を撤廃した上で、派遣労働者個人単位と派遣先単位の2つの期間制限を設ける制度に見直されたが、派遣期間を3年に制限する構造は不変だ。労働契約の自由化に向けた引き続きの改革努力が求められる。

年功給を廃止し、同一労働同一賃金にせよ!

  本来、年功と生産性の間に合理的な相関関係はないのだが、日本の大企業の多くは年功給を採用している。この年功給のため、日本では、だいたい35歳くらいまでの労働者は割安に雇われ、それ以降は割高な労働者となっている。ゆえに、日本の中途採用市場では、35歳を過ぎるとほとんど転職先が見つからないのが現実だ。また、年功給という制度が正社員の特権となり、日本の労働市場では一度正社員の立場を失うと生涯賃金が大きく落ち込んでしまうというような、いわば正社員という身分制ができ上がってしまっている。

 この年功給を無くし、年齢に関係なく仕事量や能力に応じて賃金を決める「同一労働同一賃金」・「能力給」になれば、正規・非正規の壁もなくなるし、労働市場も活発化して優秀な人材が必要な産業へ労働移動できるようになる。

 もちろん、給与体系は企業が決めることだから全ての企業がすぐに年俸制等の能力給に移行するというような事は現実的ではないが、政府が賃金に関する基本法のようなものを作り、同一労働同一賃金、能力給へ移行する指針を示すことも有効ではないだろうか。

ホワイトカラーを労働時間の束縛から解き放ち、裁量労働制の導入を!

 労働時間を法律で規制することも、もはや時代に即してはいない。実際、若手官僚や若手弁護士は月に数百時間残業をしているし、クリエイターやジャーナリスト等はそもそも残業という概念もないだろう。ブルーカラーの職種は別として、少なくともホワイトカラーの業務に関しては労働時間の規制を撤廃すべきであろう。

 経営の現場にいると、ホワイトカラーの仕事は裁量労働制であるにも関わらず、労働基準局からブルーカラー的な時間給的概念で残業や労働時間管理の要求がなされるのは理不尽であると感じる。

 安倍政権が導入を目指すホワイトカラー・エグゼンプションは、米国にある制度で、管理職などのホワイトカラーに関しては役職手当などを付与することで労働時間の規制を適用除外する制度だ。ホワイトカラー・エグゼンプションが最初に議論されたときは、「残業代ゼロ法案」とか「過労死促進法案」といった批判に封殺されて導入には至らなかった。だが、ホワイトカラーの労働者にとって労働時間の制限を法で規制することに合理性はない。

 ホワイトカラーの仕事であれば、会社に長時間いるのも短時間しかいないのも働き方はその人の自由で、要は成果、つまりアウトプットだ。それを規制するような労働時間法制は無意味だから、撤廃すべきだ。

政府の労働行政を簡素化せよ!

 解雇規制を緩和し、正規・非正規の壁を無くし、同一労働同一賃金に移行、労働時間法制も簡素化すれば、労働市場は流動性が増し、成長産業への労働移動が活発化する。そうなれば、同時に厚生労働省の旧労働省部分の仕事は、事後的な監視行政を除いて大幅に簡素化される。

 現在の労働行政は、厳しい労働規制の下で労働行政を肥大化させ、職業訓練までも国の施策として行っているのが現状だ。しかし、規制緩和して労働市場を流動化させれば、肥大化している労働行政を簡素化することが可能となる。

 実際、経営の現場にいると、現状では労働基準局からの理不尽な指導に接する機会が多い。既述のように、裁量労働のホワイトカラー(知識層)の仕事にブルーカラー的な時間給的概念で労働時間管理の要求がなされるのは理にかなっていない。

 労働規制を簡素化・緩和するのと歩調を合わせて、労働規制を所管する労働基準局の業務を合理化し、職業訓練等を所管する能力開発局は思い切って民営化する。ハローワーク等を所管する職業安定局についても、ハローワークの民営化を見据えつつ独立行政法人化することで、労働行政を大幅に合理化できるのではないか。

 現在の雇用調整助成金のような行き過ぎた雇用維持政策は、衰退産業から成長産業への労働市場の流動性を阻害しているものであり、早急に廃止すべきだ。政府は現在、雇用調整助成金をやめ、失業なき労働移動を円滑化するための助成金への政策変更を検討しているようだが、正しい方向性だ。

 政府の労働行政は大胆に簡素化し、最低限の事後的な監視行政と、最低賃金の引き上げのための政策などに限定すべきであろう。雇用は、医療・農業と並ぶ岩盤規制が多いと言われている。是非とも、日本の産業競争力を維持するために、大幅な規制緩和、合理化、簡素化を期待したい。


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