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Nov 22 / 2013
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農協を分割し、ネット等による新規参入を促し、農業流通改革を断行せよ! 100の行動45 農林水産2

初稿執筆日:2013年11月22日

第二稿執筆日:2015年11月18日

 農協の歴史は古い。農協(JA)は、戦前の産業組合や戦時中の農業会を引き継いでおり、全国農協中央会(JA全中)や全国農協連合会(JA全農)を頂点に都道府県ごとの組織があり、その下に全国約700の地域農協がぶら下がる中央集権型の構造になっている。そして戦後、減反とコメ価格の高値維持という政策の下で、日本の農業は衰退していったが、農協だけが繁栄していったのだ。

 歴史的に農協は、組織維持のために組合員の減少を嫌い、農業の大規模化に反対し、多数の零細な兼業農家体制を維持してきたと言われている。政治的な圧力団体である農協が、農地の集約化=農家戸数の減少に反対するため、政府は農地集約化の構造改革に踏み込むことができない。結果的に農家の所得を維持するために、米の価格が上がっていった経緯がある。

 米価が上がれば、農協の手数料収入も増える。零細な兼業農家が数多く維持されたため、それらの農家は非農業収入や農地の切り売りで得た資金を農協に預金している。そういった資金で農協は銀行、生損保、農業資材リースまでを行う金融コングロマリット化し、今では農協は預金量約90兆円、保険事業の総資産約50兆円とメガバンクと国内最大手保険会社を合併させたような規模にまで至っている。

 このように、農協の組織維持と収益は、高いコメ価格にある程度は左右される。コメの低価格化=競争力強化につながるTPPなどに農協が反対するのは、そこに本質があるのだと指摘されている。

 農家の相互扶助組織として流通や物資の融通で助け合うのは良いことだ。だが、組織維持のために、流通を独占・寡占する金融・流通コングロマリットである農協が、農業の産業競争力強化に抵抗するのであれば、問題である。農業の競争力強化には、流通過程に競争原理を導入することが欠かせないからだ。

農協が総合的に運営している銀行・保険・流通・物販の4事業を分割せよ!

 2015年に農協法改正法が成立した。今回の農協改革では、JA全中を一般社団法人に移行させ、地域農協はJA全中から監査部門を切り離して新設する監査法人か、一般の監査法人のどちらの監査を受けるかを選べるようにしたのみで、内実のある改革であったとは評価し難い。議論されていたJA全農の株式会社化や、農協を金融事業ばかりに傾斜させる温床となっていた准組合員(農業従事者でない組合員)利用の制限も見送られた。農協に本来の役割を担わせるには、100の行動が提唱する農協4事業の分割という抜本的な改革が必要だ。

 農協は、農産物の流通を独占・寡占するとともに農業資材の市場を寡占し、さらに預金や生命・損害保険等の業務を行い金融機関としても国内随一の規模を誇っている。農協の市場シェアは、米50%、野菜54%、牛肉63%、農業資材の販売市場では、肥料77%、農薬60%、農業機械55%だ。金融機関としての規模は先に述べたように預金残高90兆円、保険総資産50兆円である。

 この強すぎる金融・流通コングロマリット寡占企業が存在する限り、農業流通への新規参入を加速するのは難しい。農協が農業流通を寡占する弊害は、農家にとって顧客の顔が見えないためにイノベーションが起こりにくいことや、農家への資金貸し付けと農業資材市場における寡占力をもって、農協が高コストの農業用品を農家に押し付けて高コスト体質を温存させること等によって、日本の農業の競争力を削いでいるのだ。

 以前小泉元総理は、「郵政改革こそ改革の本丸」と言ったが、日本郵政に継ぐ資産規模でしかも農業の流通まで支配している農協の改革は、まさに岩盤規制改革の本丸と言える。農協の銀行(預金)・保険(生命・損害保険)・流通(農産物の流通)・物販(農薬・農業資材等の販売・リース)の4事業を分割し、農業への独占企業の支配力を削ぐべきだ。

農協に独占禁止法の適用を!

  農協は、農産物の共同販売や資材の共同購入で独占禁止法の適用を除外されている。これは、単独では大企業に伍して競争していくことが困難な小さい事業者や交渉力の弱い消費者が互いに助け合うことを目的とした協同組合は独占禁止法の適用を受けないという基本原理によるものだ。

 農協の他にも消費生活協同組合、中小企業等協同組合なども独占禁止法の適用除外を受けている。また、諸外国でも、農協は独占禁止法の適用除外を受ける例は多い。(公正取引委員会の資料によれば、主要国、新興国85カ国の独禁法中、農協の適用除外が名文上あるのは、日本、韓国、中国、タイ、アメリカ、メキシコ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ドイツ、オーストリアなど16カ国だ。)

 たしかに、小さな農家が相互扶助のために協同組合を作ることを独占禁止法で規制するのは避けるべきだが、日本の農協はメガバンクにも匹敵する規模の金融機能を持つ流通企業であり、独禁法適用除外の理念を超えている。JAの市場シェアは、先に述べたように、主要農産物でも過半であり、肥料や農業資材では、民間の最大手の肥料会社よりもはるかに市場支配力があるのが現状だ。

 それほど巨大な市場支配力を持つ企業を独占禁止法適用除外によって守る意味はない。農協に対しては独占禁止法を適用し、次章で述べるとおりに分割し、農業流通に新規参入を促進し、競争原理を導入すべきだ。

コメの生産調整(減反)・生乳の指定生産団体制度といった政府による市場介入を廃止せよ!

 農業の成長を阻害してきた岩盤の中の岩盤は、生産調整(減反政策)だ。

 1995年に食糧管理法が廃止され、コメの流通は基本的には自由になり、生産調整(減反)への参加も制度上は自由となっているが、現実には農林水産省が毎年、目標生産量を定め、都道府県に生産枠を割り振り、コメ生産者は生産調整に参加している。

 例えば、2013年の主食用米の生産数量目標は前年比2万トン減の791万トンとすることが農水省によって決められている。国内の米の消費量が減少傾向であるため、4年連続で目標を引き下げ、米の値崩れを防ぐ目的だ。

 生産数量目標は農水省が毎年設定し、都道府県に割り当てる。農家がこれに参加するかどうかは、法律上の縛りは無いが、農家に対する経営所得安定対策(戸別所得補償)が、この生産数量目標の割り当てに従うことを支給の条件としているため、農家は経済的インセンティブから生産調整に参加する仕組みになっている。

 食料自給率を上げる目的で目標生産額を国が定め、その目標を達成する為に施策を行うなら理解できるが、コメの価格を高く維持するために政府が市場に介入し、生産量を制限する今の政策は、コメの価格を高く維持することで零細農家と農協だけを利するものに過ぎない。

 コメの戸別所得補償に使われる補助金は約5000億円だ。それによってコメの供給を制限して市場価格を高くし、市場価格の高止まりによる消費者の負担は約5000億円だという。つまり、国民は、1.8兆円のコメ農業に1兆円の負担をしているわけだ。

 また、酪農では、指定生乳生産者団体ごとに生乳の生産量を国が事実上割り当てる指定団体制度があり、酪農農家は、全量を指定団体である農協に販売しなければならないことに事実上なっている。酪農家が生産した生乳は、そのエリアの指定団体である農協に集められ、指定団体が乳業メーカーに販売を行う「一元集荷 多元販売」という流通形態になっているのだ。

 酪農農家は農協に販売しない場合は全量を自分で加工することしか認められず、さらに政府からの補助金支給も受けることができなくなる。酪農においても、指定団体である農協を通じての補助金支給によって、政府による市場操作の仕組みが維持されているわけだ。

 生産調整にせよ指定販売制度にせよ、政府が市場の総生産量を決めてエリアごとに割り当て独占的に流通させる仕組みでは、農業にイノベーションが起きないのも当然のことだし、これは国内にのみ目を向けて海外市場をまったく考慮しない政策である。海外からは関税で守り、補助金による誘導でカルテルを維持し、国内での高価格を保つような制度は早急に廃止すべきだ。

ネット等による新規参入を促し、農業流通革命を!

 高島宏平氏は、「一般の家庭での豊かな食生活の実現」を企業理念に、2000年6月、オイシックス株式会社を設立した。インターネットなどを通じた一般消費者への特別栽培農産物、無添加加工食品など安全性に配慮した食品・食材の販売を進めた結果、有機野菜等を手軽に購入できる便利さと品揃えの豊富さが注目されて買い物や家事に手をかけられない女性を中心に顧客が増え、昨年の売上高は150億円に迫る。オイシックスでは、インターネットによって消費者に直接、安全で付加価値の高い食品を販売するビジネスモデルを海外にも展開し、香港にも進出している。

 農事組合法人「和郷園」代表理事、株式会社「和郷」代表取締役の木内博一氏も、発想の転換で「儲かる農業」を成功させた農業の流通改革の第一人者だ。「和郷園」は、千葉県の100軒近い農家による農事組合法人で、木内氏が1991年に事業を始めた時は仲間と5人で始めたものが、今や売り上げ40億円、約1500人の雇用を生み出している。和郷園では、都内高級スーパーなどの顧客と交渉し、売り先を決めてから作る「受注生産」「オーダーメード」に転換して利益を拡大している。

 こういった流通改革の成功事例は数多くある。ポイントは、インターネットなどの活用、海外を含めて生産者と消費者を直接結びつける仕組み作り、ブランディングや加工によって農産物の付加価値を高める点だろう。

 政府でもそういった成功事例・先進事例を積極的に情報共有して日本全国に展開していけばよい。日本の農業は、流通改革を行えば世界で競争力のある産業に変えることができるのだ。

BS番組「ニッポン未来会議」の第5回目の放映は、「ニッポンの農業」であった。前林芳正農林水産大臣と前述の和郷園代表理事木内博一氏がプレゼンターとして出演している。見逃した方は、是非とも視聴して欲しい。

「ニッポンの農業の未来を決めるのはあなたたちだー!」

http://globis.jp/article/2826


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