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Aug 08 / 2014
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「世界一安全な国を目指そう!」~警察のハイテク化、情報収集能力の向上、国際化を! 100の行動78 法務1

初稿執筆日:2014年8月8日
第二稿執筆日:2016年6月20日

「96%」

 なんの数字だかお分かりだろうか?

 日本における「殺人事件の検挙率」だ。

 日本では、殺人などの重大な罪を犯せば、ほとんどが警察に捕まるわけだ。ちなみに、諸外国での殺人事件検挙率は、アメリカで62%、中国で77%、イタリアで69%などであり、日本の検挙率の高さがわかる。

 日本における犯罪の総数も、2002年に戦後最多の約285万件を記録したが、その後の警察の努力で減少し、直近の2015年では10年前の半分以下の109万8969件まで減少している。日本の警察は優秀で、日本は安全な国だということを示す数字だ。

 しかし、我々国民の感覚は少し違うかもしれない。普通に生活していて安全で安心だと感じる人々は少なくなってきているようだ。

たとえば、

「393億7187万円」

 この数字は、2015年の「オレオレ詐欺(振り込め詐欺)」による被害額だ。殺人などの重要犯罪は高い率で検挙される一方で、オレオレ詐欺や危険ドラッグ、ストーカー被害やDVなど、身近なところで起こる犯罪は増加しているのだ。

 実際、戦後、昭和50年代までは、犯罪全体の検挙率はなんと60~70%台で推移していたのだが、その後かなり低下し、最近は30%程度になってしまっている。

 これは、高齢化、単身世帯の増加、地域社会の希薄化などの社会変化と、ITなどを駆使した複雑で高度化した犯罪の増加の影響といえよう。

 「安全」は生活の根幹でもあり、日本という国家の価値でもある。警察力の強化は、「安全」という日本の価値を高めることにもなる。一方、取り締まりを強化すると、生活が窮屈になる。従い、国民の権利を担保しながらも、テクノロジーを使って安全を維持する、という警察の能力強化が必要となってきた。

 今回の「行動」からは、司法・警察を含む法務に関わる提言に入ることとなる。

 IT化、社会構造の変化に対応する「ハイテクKOBAN」を!

 明治維新の直後、維新政府は全国に「交番」を設置した。日本の交番(英語でもKOBAN)は、日本の治安維持に大きな役割を果たしてきた、まさに日本独特のモデルだ。交番の機能は、地域社会、住民の中に「とけ込み」、犯罪を「察知し」「抑止する」機能であると言える。

 しかし、IT化の進展、携帯電話の普及やネット社会の発展は、リアルな交番では「とけ込む」ことができない領域を拡大させた。また、地域社会の希薄化は交番の本来の機能を低下させている。昔の日本の地域社会におけるつながりは、警察捜査にとって欠く事のできない存在であった。しかし、近年は、地域や企業における人間関係の希薄化が進み、聞き込み捜査による目撃情報の入手等の「人からの捜査」は非常に困難になってきている。

 また、携帯電話やインターネットなど、ITの発達は、犯罪の痕跡を残さないための手段として悪用され、サイバー犯罪、サイバー攻撃など新たな脅威も多発している。不確実性の高い厳しい業務を遂行する警察にとって、社会の変化、技術の進歩といった情勢変化から受ける影響は極めて大きい。

 そこで、IT化の進展という社会構造の変化に対応するため、「ハイテクKOBAN」という考え方を提言したい。

 リアルな交番と同じように、ITの領域にも、希薄化された地域社会にも「溶け込み」、犯罪を「察知し」「抑止する」ための方法論だ。3つある。

(1)サイバースペースの監視と通報

 現代人にとって、サイバースペースはリアルな生活領域と同等かそれ以上の役割を担ってきた。多くの日本人がインターネットを活用し、スマホを持ち、SNSやLINEのアカウントを持っている。しかし、この領域における犯罪察知・抑止機能は極めて弱い。ネットの匿名性を悪用した事件も多いし、LINEアカウントの乗っ取りやインターネットバンキングの成り済ましなども多発している。ハッカー、サイバー攻撃、サイバーテロなど社会的・経済的に甚大な被害をもたらす犯罪もある。

 このため、警察がサイバースペースにおける人々の行動に溶け込み、犯罪を察知・抑止できるようにする「ハイテクKOBAN」を提案したい。ネット上の行動履歴、ログ等のトレース、違法・有害情報の察知、犯罪告知、コミュニティサイトや出会い系サイト由来の犯罪抑止等をできるようにすべきだ。またLINEの乗っ取り、サイバー攻撃への対応策を早め早めに打って欲しい。

 危険を察したら交番に駆け込むように、いじめ・ストーカーがあったら「ハイテクKOBAN」に駆け込めるようにすればよい。不審人物の情報があれば、交番に伝えるように、不審人物情報も「ハイテクKOBAN」に集約すれば良い。

 何も警察による監視社会を作れというのではない。プライバシー保護とも両立させつつ、リアルの交番の機能をサイバースペースに持ち込む方法を実現させたい。

(2)欧米並みの通信傍受の活用

 携帯電話の普及によって人々がリアルに会わなくても、コミュニケーションができるようになったことも、交番モデルの犯罪察知・抑止機能の低下の原因だ。

 「通信傍受」については、日本でも1999年に通信傍受法が成立し、可能となってはいるが、欧米各国と年間令状発付件数を比べると、イタリア12.7万、ドイツ2.4万、アメリカ、イギリスが3千件程度であるのに対し、日本は64件と極めて少ない。これは、通信傍受の対象犯罪が欧米各国では殺人、強盗、強姦、放火、詐欺、贈収賄など広範なのに対し、日本では対象犯罪が4罪種(薬物、銃器、集団密航、組織的殺人)に限定されていること、要件が極めて厳格なこと、通信事業者の施設において常時立ち会いのもとに行う必要があり制約が大きいことなどによる。

 振り込め詐欺などの犯罪を考えると、電話でのコミュニケーションに「ハイテクKOBAN的」な機能を取り入れることによる犯罪の察知・抑止効果は絶大なはずだ。

 2016年5月、改正通信傍受法が成立し、犯罪捜査で電話やメールを傍受できる対象事件が拡大された。これまでの4類型に加えて、組織性が疑われる殺人や略取・誘拐、詐欺、窃盗など9類型が追加された。また、暗号技術を活用し、記録の改変等ができない機器を用いることにより、通信事業者の立会いを不要とした傍受を実施できるようになった。犯罪捜査の制約を取り除き、捜査機関の武器を増やす改正と言えるだろう。

(3)街頭カメラの設置と活用(リアルな交番の拡張機能)

 IT化が進み、希薄化した地域社会では、交番機能は低下している。このため、ロンドンのように街頭に数多くのカメラを設置し、リアルな交番の機能を補完することが合理的だ。

 これらの「ハイテクKOBAN」の機能強化によって、低下した交番の犯罪察知・抑止機能を高めることが求められる。
 

テロ対策の強化のため、警察の情報収集能力を向上させ、国際的な連携を強化せよ!海上保安庁、法務省入国管理局と警察による「国境警備本部」の創設を!

 2013年1月、アルジェリア・イナメナスにおいて日本人10人を含む40人が殺された襲撃テロ事件が起こった。2015年には、シリアにおける邦人殺害テロ事件、チュニジアにおける襲撃事件も発生し、我が国がテロの脅威と無縁ではないことが改めて示めされた。加えて、我々日本人は、隣国にテロ国家を抱えているというやっかいな状況にある。今日の国際テロから国民の生命・財産と公共の安全・秩序を守るため、警察の対テロ能力を強化することは極めて重要な課題だ。

 イギリス、フランス、ドイツなど欧州諸国には、テロ情報を収集する国内諜報機関が存在し、諜報収集のための特別な権限も与えられている。また、警察が使える情報収集手段も日本に比べて多岐にわたる(通信傍受や住居等への秘匿立入りなどができる)のが通常だ。

 一方で日本の場合、まず、組織面では、そもそも独立した国内諜報機関が存在せず、警察の警備公安部門がその役目を果たしている。しかも、欧米の諜報機関や捜査機関に与えられている通信傍受や家屋立入りなどに関する特別の権限が、日本の警察には与えられていない。

 日本の対テロ能力向上のため、以下の3つが必要だ。

(1)独立した国内諜報機関の設立を。警察の情報収集手段の制約を取り払い、警察独自の情報収集力を強化へ

 日本警察のテロ対策にとって最大の課題は、情報収集能力だ。

 通信傍受が使えず、会話傍受(屋内での諜報収集)も不可能であるため、テロリストと疑われる人物たちに対しても、警察は物理的な動静監視しかできない場合が多いのが現状だ。米国のFBIのような独立した諜報機関を創り、対テロ上必要な「新たな武器」を法令上明確に警察に与える必要がある。

(2)国内情報機関、海外情報機関との連携強化

 加えて、警察がテロ対策上必要な情報を他機関から集約することについても、日本では制約が多い。警察以外の機関が収集、保有しているデータへのアクセスを効率的に行えないため、組織犯罪等の捜査における機動性を低下させている。今後は、内閣情報調査室、外務省国際情報統括官、防衛省情報本部、警察以外の情報機関との連携をより強化すべきだ。

 テロ対策上は、海外の情報機関との連携も極めて重要だ。同盟国、友好国、国際機関との情報連携の強化、また、在外公館への警察アタッシェや防衛駐在官の派遣による諸外国の情報機関へのアクセス強化が必要だ。

 情報の世界もギブ・アンド・テイクだ。こちらに良い情報が無いと、彼らも出してくれない。だからこそ、(1)で述べた独自の諜報機関の設立が重要になる。また秘密が担保される保証が無いと貴重な情報を出してくれない。だからこそ、秘密保護法の制定はとても重要であった。

(3)水際対策強化のため国境警備本部の設置を!

 現在、日本には206万人の合法的在留外国人と、6万2000人の不法滞在外国人が存在している。最近では、身分を偽って在留許可を得ている偽装滞在者も増加している。今後日本が益々国際化していく中で、水際対策の脆弱性を是正していく必要がある。

 現在、内閣官房に「空港・港湾水際危機管理チーム」が設置され、空港危機管理官等の関係者が情報共有、合同訓練等により連携強化を図っている。こうした取組をさらに一歩進めるべきだ。例えば、ドイツには、入国審査や沿岸警備、対テロ特殊部隊などを担当する連邦警察が存在する。日本でも、海上保安庁と法務省入国管理局との連携を強化し「国境警備連携本部」を作り、密入国外国人やテロ容疑外国人の出入国管理を行うべきであろう。

 まさに、慶応大学の神保謙さんのご指摘の通り、「警察庁警備部・警視庁公安部・公安調査庁はいずれも国内の暴力団、極左・極右団体、宗教過激派、反体制勢力などの捜査、情報収集を主として担当してきた。しかし、日本の治安・安全保障への脅威が国際化・多元化・ハイテク化していることに鑑み、公安警察のミッションや人事体系を大胆に改革する必要がある。海外の治安・情報機関との連携、人事交流、留学などを通じて、国際情勢認識と人脈に長けた人材を大幅に拡充する必要がある」のだ。

警察資源の選択と集中を進めよ!交通部門は警察組織から外部化し、捜査部門の能力強化と近代化を進めよ!

 今まで述べて来た通り、今後は、警察のハイテク化、諜報能力の強化、そして国際化を図るべきであろう。だが、その資源は警察にあるのだろうか?

 諸外国の警察と日本警察を比較すると、その体制面での負担は過重といえる。

 警察官1人当たりの負担人口を比較すると、欧米では警察官1人当たりの負担人口200~300人程度に対して、日本は約500人というのが現実だ。
(フランス:~306人、ドイツ:~336人、イギリス:~372人、イタリア:~218人、アメリカ:~365人、日本:499人)

 これで「世界一安全な国を目指そう!」といっても、酷な話だろう。衆議院議員の平将明さんが指摘するように、「警察官の増員」に求めるよりも選択と集中により、「捜査手法の高度化」に注力する方が現実的であろう。

 現代の警察は、人身の安全が脅かされる等の国民の安全・安心に直結する事態に対して、迅速性、機動性、柔軟性を発揮し、適切な情報発信をするなど、より高度な事態対処能力を示す必要に迫られている。社会の変化と技術の進歩に即応した体制の強化が必要だ。

 しかし一方で、警察の人的資源も予算も限られていることも事実だ。そこで、選択と集中と外部化だ。以下2点を提案したい。

(1)高度な捜査能力を要しない交通部門に関しては、警察組織から外して外部化

 先日、休暇を取って高速道路を運転中に、おもむろに後ろで赤い光がぐるぐる回り始めた。横に並ばれ、「ついて来るように」という指示が出て、程なくして停車して、取り調べを受けた。

 まっすぐの高速道路で、平日で交通量も少ない、しかも天気が良い、真っ昼間の出来事だ。流れに従って左車線を走っていた。下り道に入ってちょっとスピードが出たかなぁという矢先だ。「ヤバい」と思い、速度計を見たら時速が107kmだった。飛ばしていない。だが、どうやら途中から制限時速が80kmに変わっていたのだ。

 「こんなことに警察能力を使うならば、違うことに使ってほしい」と思うのが、普通の納税者の思いではないだろうか。逆に質問をした。どうやら、その県では、80名の高速警察隊がいて、800名近くの交通課の警察官がいる。それをすべて外部化した方が良いと思う。2006年の道路交通法改正によって、放置車両確認事務の業務が民間法人に開放されたことはよくご存知であろう。駐禁取り締まりの民間委託によって、取り締まり頻度も上がり、明らかに駐禁が減ったのは確かだ。

 駐禁取り締まりに限らず、警察業務のうちでも交通部門に関しては、警察官の高い技能や専門知識、身体能力も必要ない。重要な犯罪に繋がる可能性も低い。むしろ、民間委託することで、取り締まりの頻度や効率を向上させることが期待できる。減点制を止めて、罰金を収益源として独立採算にすれば、その分の警察予算を捜査部門に集中することもできる。

 高い捜査能力や技術の必要性がない交通部門は警察組織から外して外部化し、独立採算とする。他にも外部化できる組織があるはずだ。徹底的にアウトソーシングを進めて、コストダウンに取り組んで欲しい。

(2)その分の予算、人員、資源を捜査部門に集中

 前述の通りのハイテクKOBAN、諜報機関の設立、国際化に備えるなどの、思い切った投資をしてほしい。

 そういった選択と集中によって、捜査人員の増員、DNA型鑑定等科学捜査の体制(職員、機材)強化、サイバー犯罪、サイバーテロなどへの対策、新たな科学捜査技術の研究開発など、能力増強と近代化を進めて欲しい。

国民の権利保護と警察への信頼向上のため「取り調べの可視化」を!すべての事件において取り調べを録画せよ!

 警察能力や通信や電話の傍受、さらにはカメラの設置ができると、個人情報が盗み取られ、自由が奪われていく感覚になる。安全のためには、ある程度の情報提供はやむを得ないと思うが、気持ちの悪さが残る。もしも、全く謂れもない理由で、疑いをかけられたらどうなるだろうか。警察権力には対抗しにくい。そこで、「取り調べの可視化」が重要になる。

 「取り調べの可視化」に関しては、警察の現場からは、取調べの真相解明機能の低下や、業務上の労務の増加等の点が指摘されることが多い。だが、取り調べにおける録音・録画の義務づけは時代の流れとも言えよう。

 実際、当時不祥事が続発した警察を改革するため2000年から「警察改革」が進められたが、いまだ国民から「信頼される警察」という状況には遠いように感じる。古くは足利事件から、最近では厚生労働省の村木厚子氏(無罪確定・現事務次官)が逮捕・起訴された郵便不正事件など、えん罪事件は確実に起こっている。取り調べの可視化は、国民の警察への信頼を確固たるものにする大きなチャンスだ。

 今日、イギリスやアメリカのかなりの州のほか、オーストラリア、韓国、香港、台湾などでも、取調べの録画や録音を義務付ける改革が既に行われている。

 現状、日本でも取調べの録音・録画の試行が行われているが、一部の事件に過ぎない。すべての事件における取り調べの録音・録画を早急に実現すべきだ。最近では記憶媒体の容量が飛躍的に拡大し、コストも下がった。今では、スマホでも録音・録画できる。是非前に進めるべきであろう。

 取り調べの可視化については、2016年5月の改正刑事訴訟法でほんの一部だが、義務化が導入された。この改正で可視化が義務化された対象は、裁判員裁判事件と検察の独自捜査事件で、全事件の3%程度となる。これらの事件の取り調べ全過程で原則として警察と検察に取り調べの録音・録画が義務付けられることとなった。しかし、対象であっても取調官が十分な供述を得られないと判断したときは実施しなくていい例外規定も設けられているなど、完全ではない。警察、検察の信頼向上のため、さらなる可視化を求めたい。

犯罪の予防のための施策の強化を!

 各国の人口当たりの犯罪発生率を見ると、イギリス5500件/10万人、フランス4000件/10万人、アメリカ3800件/10万人などと比べ、日本は1800件と少ないことが分かる。

 安全な社会の維持のためには、当然ながら社会の構成員の遵法意識を高め、犯罪を未然に防ぐことが最も重要だ。犯罪発生件数が少なければ、当然ながら警察も限られた人員で重要犯罪の捜査に注力することが可能になる。

 その点、日本人は、歴史的に勤勉で遵法意識の高い国民性である。東日本大震災の時も、大災害後の極限状況下、強盗や暴動などの重要犯罪も起きず、避難所においても整然と避難生活を送った日本人の姿勢には世界から賞賛が集まったほどであった。

 この日本人の長所を伸ばし、犯罪を予防するための施策に重点を置くべきであろう。医療の「行動」でも、予防医療への注力を提言した。同様に犯罪でも、予防に注力すると、犯罪捜査のコストが減らせるし、犯罪を未然に防ぎ、不幸な被害者を生み出すことを無くすことができる。

 最近では、ストーカー犯罪や、ネットいじめ、子どもによる殺人など、若年層による道徳観念の希薄化した犯罪が増えている。また、脱法(危険)ドラッグなど、薬物に安易に手を出してしまう事件も後を絶たない。

 そういった犯罪の実態や影響について、警察官が教育現場に出向いて、学校で生徒たちに話をする機会を増やしてはどうだろうか。青少年犯罪の抑止に大きな効果があるはずだ。学校などの教育機関と警察の連携をより強化し、例えば、年に1度、すべての学校で現職警察官が生徒たちに対して講演を行うことから始めてはどうだろうか。教育現場は抵抗を持つかもしれないが、警察をより身近に感じてもらう良い機会だと思う。

 また、日本では、有害メディアに対する規制が緩く、自主規制や都道府県の条例任せになっている。だが、昨今の「殺してみたかった」ことにより発生している青少年犯罪への影響を考えると、残虐な映画、漫画、ゲームなどは規制を強化してしかるべきだろう。

 成人に対しても、治安の維持、犯罪の要望に市民が積極的に参画するような社会意識の醸成ができることが理想的だ。昔、シンガポール人の友達と六本木で夜な夜な遊んでいた。僕が、商社マンになりシンガポールに出張に出かけた時のことである。道端で警察官が僕に声をかけてきたのだ。ギョっとしたが、何と!その遊び人だったのだ。あの遊び人が、真面目に警察官をやっていたのだ。「どうして?」と聞いたら、「国民の義務なんだよ」と答えが返ってきた。

 同国では国民が「ナショナル・サービス」として徴兵され、一定期間警察官の業務に服する義務が課せられている。シンガポール警察合計約3万3000人のうち、正規の警察官は7000人に過ぎず、大多数をナショナル・サービスとして従事する警察官やボランティア警察官などが占める。その結果、犯罪発生率が日本よりも低い1200件/10万人となっている。

 国民が警察官の業務を経験することは、遵法意識の向上にも大いに貢献し、地域住民の警察業務、犯罪防止への協力、地域社会の安全への主体的参加を促す効果があるという。大いにうなずけたものだ。

 日本でもパートタイム警察官を国民に義務化せよ!といっても無理があろう。だが、「交番勤務一日体験」といった施策から始めても良いのではないだろうか。犯罪は事後の対処よりも事前の防止が重要である。犯罪防止施策に大いに力を注いでもらいたい。

 やはり、日本には、「世界一安全な国」を目指して欲しい。そのためには、この行動で提言したような、「ハイテクKOBAN」や、情報収集能力の向上、さらには国際化して海外捜査機関と連携する必要がある。また、資源が限られているので、選択と集中をして、徹底的に外部化して、コストダウンを図る。さらに、犯罪予防に取り組むことが望まれる。

 日本は「世界一安全な国」として、世界に誇れるようにしようではないか。そのためには、警察任せではいけない。国民との連携が重要になるのだ。


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