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Oct 17 / 2011
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ハードパワー(防衛力)100の行動16 外務2

初稿執筆日:2011年10月17日
第二稿執筆日:2015年4月26日

 日本を取り巻く国際情勢は、年々厳しくなっている。中国の透明性を欠いた国防力の強化や東シナ海・南シナ海における攻勢、北朝鮮による核・ミサイル 開発の継続、ロシアの極東方面での再軍備や大統領による北方領土訪問による不法統治の正当化など、近隣諸国それぞれとは難題を抱えているのが実情だ。

 2011年の4-9月の上半期には、中国機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)が、前年比3.4倍に増えたと報道された。かつては海上・ 航空戦力では日本が中国を圧倒していたが、今では日本優位から中国優位に変わる決定的な「力の変化」が起きているのだ。その認識が重要である。

 では、どうすれば良いのだろうか。外交の基本は、力(パワー)である。前行動で述べた通り、パワーが落ちると、国民の生命と財産を守れずに、他国に蹂躙され、服従を強いられることになる。平和を望むからこそ、全てのパワーを高めていくことが重要になるのである。

 詳細は、「100の行動」の防衛編に譲るものの、この「行動」では、如何にして外交の重要要素であるハードパワー(防衛力)を高めていくかを論じていきたい。国民の生命・財産を守り、平和を維持するためには、強くなければならないのだ。

「国防の基本方針」の改訂を!【済み(2013年12月)】

 日本の安全保障(防衛)における基本方針は、1957 年に閣議決定された「国防の基本方針」に示されているが、策定後50 年以上も経過しているのに、一度も改訂されていない。その後、防衛費 GNP1%枠を撤廃した翌1987 年に閣議決定された「今後の防衛力整備について」にて、(1)専守防衛、(2)他国に脅威を与えるような軍事大国にならない、(3)文民統制を確保する、 (4)非核三原則、などが「防衛政策の基本」を構成するものとして提示され、今日に至っている。

 しかしながら、1957 年に「国防の基本方針」策定以降、日本を取り巻く国際関係や安全保障環境は大きく変化している。

例えば、安全保障における脅威がグローバル化(トランスナショナル化)しており、弾道ミサイルなどが世界的に拡散している現状では、従来の「専守防衛」での想定範囲を超えていると言わざるを得ない。

 したがって、まずは現下での日本の国益、ならびに国際社会における役割を踏まえて、国民と国際社会に対して説得力と透明性のある安全保障の基本方針の見直しに着手することが、喫緊の課題として求められる。

 「100の行動」による問題提起以降、政治においても安全保障に関する活発な議論が行われ、新たに設置された「国家安全保障会議(NSC)」の決定を経て、「国防の基本方針」に代わる我が国の安全保障政策に関する最高指針として、2013年12月に「国家安全保障戦略」が閣議決定された。「戦略」は、我が国の国益を長期的視点から見定めた上で、外交政策及び防衛政策を中心とした国家安全保障に関する基本方針を定めたものとなっており、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していくことを基本理念として明らかにしている。日米同盟の強化とともに、我が国自身の防衛力について国家安全保障の最終的な担保であるとの位置づけを明らかにし、総合的な防衛体制を構築することとしている。

  このような政治の動きは積極的に評価し、今後も我が国の置かれた厳しい安全保障環境を直視した防衛政策を進める必要がある。

日米同盟の共同運用の実効性向上を!【一歩前進】

 東日本大震災後、陸・海・空3自衛隊による10万人出動態勢と同時に、在日米軍・太平洋艦隊を中心とした米国軍は、1万8000人を超える海・空・海兵隊の将兵と10隻の艦艇を現地に派遣した「トモダチ作戦:Operation Tomodachi」を展開した。発災直後は、被災者の捜索・救援、その後は福島第一原子力発電所事故への対応や復興支援を行った。このトモダチ作戦により、多くの国民は日本の安全保障における日米同盟の重要性について、改めて認識を深めたことと思われる。

 しかしながら、日米安全保障体制をより一層円滑に機能させるための、集団的自衛権行使に関する政府による憲法解釈の変更については、依然として見送られたままである。その結果、例えば、日本防衛事態に至る前の段階での第三国の米国艦船への攻撃に対する防護問題や、米国領土に向かう弾道ミサイルの迎撃の問題などは、いずれも従来の憲法解釈の通り、自衛権行使は認められないことになる。日米同盟は日本の外交・安全保障政策の基軸であることから、両国間の信頼関係のさらなる強化と、共同運用の実効性を向上させるためにも、政府には責任をもって集団的自衛権の問題に、正面から取り組む政治的決断が強く求められる。当然、普天間基地問題の早期解決に向けた行動も期待される。

 

 集団的自衛権の問題に関しても大きな前進があった。政府は2014年7月、集団的自衛権を使えるようにするための憲法解釈の変更を閣議決定した。

 この解釈変更の閣議決定では、我が国の置かれた安全保障環境の変化などによって「(アメリカなど)他国への武力攻撃でも、わが国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」と指摘し、集団的自衛権の行使が「憲法が認める必要最小限度の武力行使」に含まれるとした。 

 集団的自衛権行使の要件として

(1)密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、国民の生命・自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある

(2)国民を守るために他に適当な手段がない

(3)必要最小限度の実力行使

の3要件を規定し、これを満たした場合の武力行使は「憲法上は我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置」とし、国際法上は集団的自衛権が根拠と明記した。

 これによって、「100の行動」でも指摘した日本防衛事態に至る前の段階での第三国の米国艦船への攻撃に対する防護や、米国領土に向かう弾道ミサイルの迎撃などを含めた、集団的自衛権を使う必要がある事態についても対処が可能となった。政治の「行動」を率直に評価しよう。

武器輸出三原則などの見直しを!【済み(2011年12月)】

 1967 年に佐藤内閣が打ち出した武器輸出三原則は、共産圏諸国、国連決議が武器輸出を禁止した国、そして国際紛争の当事国及び当事国となるおそれのある国には、武器を輸出しないとした原則であった。しかし、1976 年、三木内閣が、それ以外の国にも武器輸出をしない、武器以外に武器製造関連設備も輸出しないという方針を加えたために、3つの対象地域のみならず、同盟国であるアメリカをも含む全世界的な全面武器輸出禁止の措置となってきた。

 その後、同盟国であるアメリカへの武器技術供与を例外とするとしたり、ミサイル防衛に関する日米共同開発・生産では武器技術三原則を適用しないとしたりしてきた。しかし、今までの武器輸出三原則の緩和策は、あまりに限定的で、様々な弊害を除去できていない。

 第1に、依然として日本の防衛産業は、アメリカやその他友好国との共同開発計画に十分に参加できず、日本の防衛産業の生産・技術基盤が低下している。

 第2に、日本の防衛産業は、国際的に孤立しているためにスケールメリットを失っているが、政府は、国内産業保護のために単価の高い国内製品を購入せざるを得ず、調達コストが高くなっている。

 第3に、旧式化した自衛隊の装備の中には、今なお発展途上国等では有用なものもあり、これが輸出できない。現代世界とりわけ、アメリカや西欧の民主主義諸国では、武器政策は共同生産が主流となっており、これに参加できないことは、武器の性能、武器のコスト面双方で大きなデメリットとなっている。

 そこで、三木内閣の時に新たに付け加えた条件はこの際見直し、1967 年の武器輸出三原則の本来の精神に立ち返り、日本に脅威を与える可能性のある国、国連決議によって武器輸出が禁じられている国、さらには国際紛争の当事国ないしは当事国となりかねない国には武器を輸出しないという方針に戻すべきである。

 武器輸出三原則の見直しに関しては、「100の行動24防衛2(2013年6月)」において指摘したように、野田政権で見直しが行われた。

 その後2014年4月には、防衛装備の海外移転に関して、武器輸出三原則等に代わる新たな原則として、「防衛装備移転三原則」を策定し、

(1)紛争当時国や国際条約違反国など移転を禁止する場合の明確化

(2)平和貢献や我が国の安全保障に資する場合など移転を認め得る場合の限定と厳格審査

(3)目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保

を要件として、武器輸出解禁に舵を切った。この結果、同年7月には実際に迎撃ミサイル「パトリオット2(PAC2)」の部品の米国への輸出と、F35戦闘機搭載のミサイル技術をめぐる日英共同研究がスタートしている

 こうした武器の輸出解禁や国際共同開発は、我が国の防衛産業の基盤強化(生産・開発コストの低下、技術力向上、開発リスク分散等)、ひいては防衛力の裾野を拡大させるものであり、大いに評価すべきだ。

国際平和協力活動(PKO)への積極的な参加を!

 日本が、原則全てのPKOに積極的に参加するのも一案であろう。この「行動」は荒唐無稽に思われるかもしれない。しかし、日本が国際安全保障環境の改善に積極的に取組み、紛争後の平和構築と国家建設を支援することは、日本と世界との関わりを象徴するものとなる。

 平和維持隊の本体業務への参加に加えて、国際救援活動、選挙監視活動、医療活動、警察行政支援、司令部連絡要員の活動など、PKOへの関わり方は多様である。こうした取組を日本のグローバルなプレゼンス強化に役立てるのも一案である。

 2015年現在において議論が進められている安全保障法制の整備をめぐる政治の動きの中では、自衛隊が、その都度「特措法」を制定しなくても、常に他国軍を「後方支援」できるようにするための新たな「恒久法」の制定が予定されている。現段階では「後方支援」に限られてはいるが、積極的に世界の平和構築に貢献する積極平和主義のもと、自衛隊の海外活動の範囲が広げられるべきだ。

国防・安全保障への国民的議論を!

 自衛隊は、米軍同様、有事の際に日本を防衛する最重要組織である。長年における国内外での災害救援活動、人道支援活動、国際平和協力活動(PKO)などの 実績により、自衛隊に対する国民の評価は高まりつつある。特に、2011年の東日本大震災での自衛隊の多大な貢献は、涙が出るほどの感動を被災地に与えた。しかしながら、国民の間で、自衛隊、さらには国防・安全保障に関する議論は、残念ながら十分に醸成されているとは言い難いのが実情だ。

 沖縄の米軍基地問題については、歴史的経緯に起因する現地の過剰な負担に配慮しつつ、日米政府間で緊密に連携して取り組んでいく必要がある。具体的 には、日米による防衛施設の共同使用化を進めていくことにより、(1)沖縄の基地負担の軽減、(2)自衛隊と米軍の連携強化などを図ることを求めたい。今後、日米両政府には、日米同盟の強化と持続性確保のためにも、基地の共同使用について検討されることを期待したい。

 「100の行動」でハードパワー(防衛力)に関して初めて問題提起した2011年10月の時点では、実際の政治停滞に関して以下のように述べた。

 「上記5点に関して外交上のハードパワーである防衛力を高めるための“行動”をまとめてきたが、またもや政治家が難題を避けている構図が浮かんでくる。具体的には、(1)国防の基本方針が、1957年移行に改定されていない事実、(2)日米同盟が機能的に運用できない法制度、法解釈の問題、(3)日本の産 業、さらには日本の防衛力を著しく削いでいる無意味な武器三原則問題の放置、(4)国際貢献への及び腰の態度、そして(5)国防・安全保障の国民的議論を避け て、理想論に終始している姿勢は、国民から見ると、“本気で日本の外交を行う意思があるのか。本気で日本の国益、さらには国民の生命・財産を守る意思があるの か”と、疑いを持ってしまう。」

 しかし、その後の政治は大きく進展した。我々国民はこの政治の「行動」を評価すべきだ。

 かつては海上・航空戦力では日本が中国を圧倒していたが、今では日本優位から中国優位に変わる決定的な「力の変化」が起きており、我が国の置かれた安全保障環境は非常に危うい。その認識を肝に銘じて、政治家、官僚、国民が考え、議論し、行動しなければならない。

謝辞:今回の「行動」にも、渡部恒雄氏(東京財団)と神保謙氏(慶應義塾大学)の多大な協力を頂いたことをこの場に明記し、感謝申し上げます。


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