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Oct 24 / 2011
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外交パワーを上げるために経済力・資源力を向上させよ!100の行動17 外務3

初稿執筆日:2011年10月24日
第二稿執筆日:2015年4月26日 

 2005年に参加したダボス会議で、イランの著名な学者が、「外交におけるパワーの重要性」を論じていたのを、僕は鮮明に覚えている。彼が述べていた外交におけるパワーとは、軍事力、ソフトパワーに加えて、経済力そして、鉱物資源やエネルギー等の資源力であった。

 なぜ経済力が外交のパワーになるのか?なぜ資源力なのか?どうすれば、それら経済力や資源力を外交におけるパワーに転換できるのか?この「行動」では、外交パワーを上げるための「経済力・資源力」について論じていくことにしたい。

 経済力を外交パワーに高める方策は、何も経済連携ばかりでない。獲得した外貨を使い、外貨が少ない国と交換条約を結ぶことも十分な外交力に繋がるのだ。記憶に新しいのは、韓国への外貨融通資金の合意だ。

 「日韓の外貨融通資金支援枠を5倍以上の700億ドル(約6兆円弱)に拡大合意」という見出しが、2011年10月18日の日韓首脳会談後にひっそりと掲載された。

 これが意味することを、多くの国民はあまり知らない。リーマン・ショックを経て順調に推移した韓国経済だが、ユーロ危機に際し、韓国から投資資金を引き揚げる動きが強まり、ウォンが急落、韓国内では中堅・中小企業などで外貨の調達難が生じていた。韓国の銀行は、欧州の銀行から多額 の資金を外貨で調達しており、ユーロ危機で欧州銀行が急激に外貨を還流させる事態となると、1997年のIMF危機の二の舞となり、韓国の外貨が枯渇するリスクがあった。そこを、日銀及び日本政府が韓国に外貨を融通することに合意し、韓国を支援することにしたのだ。これは、韓国政府から多いに感謝されている施策であった。経済力を外交パワーに活用した一例である。

 一方、資源力に関しては、どうか。日本は、エネルギーや鉱物資源は、ほぼ全量輸入に頼っている。従い、自らが資源力を使い、他国にパワーを行使することはできない。だが、資源獲得戦略を練り実行することにより、他国に服従しなければならない事態は避けることはできるのだ。

 石油の輸入が止まったことが契機となり、日本が第二次世界大戦に参戦した事実は、決して忘れてはならないことである。さらに、最近の中国政府によるレアメタルの供給サボタージュは、尖閣諸島沖で故意に衝突してきた中国籍漁船船長逮捕に対する報復措置であったと言えよう。明らかに資源を外交パワーとして使う意図が表れているのだ。

 「止めるよ」と言われて、「頼むから止めないでくれ」と懇願するようであれば、そもそも交渉力がないのだ。常に、エネルギーや鉱物資源等の輸入元を多様化させ、「どうぞご自由に」という態度を示せるようになることが、外交上の交渉力・発言力を上げることに繋がるのである。

 日本は国内総生産(GDP)で世界第3位、対外純資産は約251兆円に達し20年連続で世界第1位の債権国(第2位は中国で約144兆円)、外貨準備高は1兆ドルを超える世界第2位(第1位は中国で約2兆4000億ドル)、米国債保有額では約9000億ドルの世界第2位(第1位は中国で約1兆1000億ドル)、政府開発援助額(ODA)は約110億ドルで世界第5位、その他に、約1億2000万人の国内消費市場、製造業での高い技術力と部品供給能力(サプライチェーン)など、比較優位なリソースを有している。

 日本が有する、比較優位な経済的リソースと人・カネ・知恵などを、戦略的、多元的、重層的に連携させ、総合的な外交パワーにする必要がある。そのためにも、経済外交・資源外交を積極的に展開して、日本の経済力に比したレベルまで存在感を高める必要がある。そのために、以下の通り、「行動」を提案したい。

強い経済力こそが国力の源泉である ― 成長戦略を!【一歩前進】

 強い経済力こそが日本の国力の源泉であり、外交パワーであるとの「原点」を再認識する必要がある。強い経済力を有する日本には、国際社会からの関心、魅力、理解、期待感が高まり、「ヒト・カネ・モノ・チエ」が一層集積する。その結果、貿易額の拡大、国内消費市場の開放による諸外国の日本への経済依存度の増大、対外投資ならびに対内直接投資の増加、対外資産の増大などにより、益々外交パワーとプレゼンスが高まる。

 そのための方策は、先の経済産業編の「100の行動」に記載済みなのでここでは割愛するが、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の三本の矢からなるアベノミクスの成果は2015年現在顕著に表れている。2012年には8千円台だった日経平均株価は2万円の大台に届くまでに倍増した。日本経済が長年苦しんできだデフレも、日銀が「消費者物価上昇率が2%に向かって上昇し続ける基調には変化はなく、デフレ脱却への道は見えてきた」とするまでに改善した。2012年に475兆円だったGDPも、政府予想では、2015年には504兆9000億円と、リーマン・ショック前の07年度の513兆円以来、8年ぶりに500兆円台を回復すると予測されている。

 重要なことは、その経済力によって獲得した外貨、対外純資産、技術力等をどうやって他国に投資・融通・還元し、多くの感謝を得て、パワーに結び付けるかだ。それらをしたたかに考える外交戦略が求められる。

他国との経済の繋がりを外交パワーに繋げる ― まずは環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を

 「TPP締結は、アメリカにとって空母と等しい価値を持つ」

 米国のカーター国防長官は、4月(2015年)7日、アリゾナ州立大学のマケイン研究所における講演で、環太平洋経済連携協定(TPP)を空母にたとえ、その重要性を強調した。

 カーター長官は、「TPPは、経済的な利益獲得のみならず、地域に対し、アメリカが責務を果たしていると示すことができる。このような協定の締結は、国防長官が話す内容ではないが、TPPは私が話したいと思うほどの重要性を持つ」と述べている。

 TPP交渉には、日本、アメリカ、オーストラリア、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、シンガポール、ペルー、ベトナム、ブルネイが、参加しており、これらの国々は、世界経済の40%と、世界全体の貿易額の3分の1を占めている。

 アメリカがこれほどまでに戦略的に位置付けているTPPは、今日までの経済連携の遅れを挽回し、アジア太平洋地域の経済成長を取り込み、日本経済を活性化するための起爆剤となる。品目、分野によりプラス・マイナスの影響はあるものの、日本全体としてはGDPの増加が予測されるとともに、国際社会に「国を開く」という強い意思を示すことになるので、国際的な関心および注目度を高める効果も期待出来よう。

 さらに、米韓FTAが韓国議会での批准後に発効した場合、日本企業は韓国企業より米国市場での競争条件が不利になることが不可避である。TPP参加により同等の競争条件を確保できることも見込まれる。

 将来的には、TPP参加により、長年の懸案であった、遅滞している日EU・日中・日韓のFTA2国間交渉への促進効果をも期待できる。また、TPPがアジア太平洋地域の新たな地域経済統合の枠組みとして発展していく場合には、TPPでの貿易・投資の先進的なルールが、今後、同地域での実質的な基本ルールになる可能性も否定できない。

 だからこそ、日本はTPP交渉に参加して、有利なルール作りに関与することが求められる。ジョン・ルース駐日米国大使は、「日本と米国とで世界貿易のあるべき姿を創るリーダーシップを発揮するのだ」とスピーチしていた。TPPを契機とし、経済連携が、日本の外交力を高めていく格好の事例にしたいものだ。

官民一体となった資源外交の推進を!【一歩前進】

 最近(2011年現在)の経済外交・資源獲得力(資源外交)において、日本は韓国・中国と比較すると、後塵を排していると言わざるを得ない。

 資源外交では、韓国の李明博大統領は、2011年8月にカザフスタン・ウズベキスタン・モンゴルの中央アジア3カ国への歴訪で、ガス田開発・ガス化学プラント事業・資源エネルギー協力合意などを含む総額121億ドルもの商談をまとめるなど、成果を上げている。さらに、希少金属であるリチウムの世界的埋蔵量の半分を占める南米ボリビアに、大統領特使として、李大統領の実兄である李相得国会議員を3回も訪問させた。その結果、両国は同年2011年8月にリチウム資源開発の共同研究を行うことで合意に至った。

 中国の胡錦濤国家主席は2003年の就任以来、アフリカ諸国を既に十数回も訪問するなど、積極的な首脳外交を行っており、豊富な資金でのインフラ 投資により、鉱山や油田の権益確保を推進している。最近では、アフリカ諸国のみならず、中・南米諸国に対する資源外交を、一段と強めている。(ただし、中国企業のヒモ付きが多く、現地での雇用創出や技術移転が不十分であることから、中国による「新植民地主義」との批判や軋轢が生じている)

 他にも、中国石油天然ガス集団(CNPC:探鉱・開発)、中国石油化工集団公司(SINOPEC:精製・加工)、中国海洋石油(CNOOC:海洋探 鉱・開発)の3社は、中東・アフリカ・中南米・中央アジア・ロシアなどの各地域で、100を超える原油・天然ガス関連のプロジェクトを展開している。

 上述のように、韓国・中国の両国は国家戦略に基づき、経済・資源・安全保障などが、まさに一体となった外交を展開していることは、高く評価できる。特に、経済界出身の李韓国大統領は就任直後から、「グローバルコリア」というスローガンを掲げ、積極的に対外戦略を展開している。その背景には、韓国がアジア通貨危機の際に、債務不履行による経済破綻の寸前まで追い込まれた辛い経験と危機感がベースとなった、厳しい国際競争を勝ち抜くという決意・覚悟があると思われる。その戦略と実行力を、日本人は謙虚に学ぶべきであろう。

(1)「資源外交戦略会議」(仮称)の設置を!

 東日本大震災以降、エネルギー政策の見直しが急務となり、中長期の資源確保政策を練り直す必要がある。これを機会に、新設の国家戦略会議の傘下に同会議を設置し、関係省庁(外務省・経産省)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)のみならず、主要業種での民間企業が多数参加して、今後の経済活動 や新技術開発の動向を踏まえて、必要な資源情報を把握するとともに、包括的かつ体系的な資源戦略を策定する必要がある。

 そして、当面必要とする資源とそれらの産出国に対する外交政策の優先順位をつけるとともに、政府開発援助(ODA)やインフラ輸出を組み合わせた経済協力政策を提示することが求められる。

(2)首脳レベル・閣僚レベルでの積極的な資源外交の展開を!

 資源産出国との関係維持・強化には、政府全体が一体となり、首脳・閣僚レベルにおいて、経済界とも緊密に連携しつつ、持続的・継続的に資源外交を展開することが不可欠である。資源産出国への経済協力については、資源エネルギー・環境分野での技術協力や資金協力を含めた経済協力のみならず、教育分野や文化交流なども含めた、幅広く重層的な協力・信頼関係(WIN-WINの関係)を構築することが求められる。

(3)石油・天然ガス開発企業に対する支援の強化を!

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による出資・債務保証の上限枠の拡充や、日本貿易保険(NEXI)による資源・エネルギー総合保険の拡充 などにより、開発企業に対する支援を強化する必要がある。さらに、国際協力銀行、新エネルギー・産業技術総合開発機構、日本貿易振興機構などの関係機関の施策に加え、政府開発援助(ODA)を活用して、総合的かつ戦略的な支援強化を図る必要がある。

 戦略的な資源外交に関しては、「経協インフラ戦略会議」による司令塔のもと、積極的なトップセールス、関連機関による支援、ODAの活用を含む総合的な取り組みが進められており、評価したい。

海洋資源大国日本を目指した資源開発の強化を!

 日本は資源のない国だと言われ続けてきたが、科学技術の発展はその前提を覆すかもしれない。その可能性は、海にある。

 海洋国家日本にとって、広大な海はまさにフロンティアとして大きな可能性を持つ。日本の持つ排他的経済水域(EEZ)は、国土の12倍、世界第6位の広さを誇っており、これまでの調査によって、メタンハイドレート、レアアースなどの各種エネルギー・鉱物資源が豊富に存在していることが確認されている。今後の技術の発展と「行動」次第で、北海油田を開発して資源国となったイギリスと同様に、日本が資源・エネルギー大国となる可能性も潜んでいるのだ。

 天然ガスの一種であるメタンハイドレートに関しては、掘削方法を含めて技術的な課題を解決し、2020年代の前半の商業生産が目指される。成功すれば、アメリカのシェールガス革命以上に日本の「資源力」は劇的に変わる。日本の資源力を高め、外交パワーを向上させるため、こういった海洋エネルギー・鉱物資源について積極的に投資を進め、技術開発を進める必要があろう。

日本版SWF(Sovereign Wealth Fund)による戦略的な外貨準備の活用を!【一歩前進】

 日本は世界第2位の外貨準備を保有しているが、その運用は基本的に米国債への新規・再投資に限られている。一方で、中国は2兆ドルを越えた外貨準備の一部運用を、政府系ファンドである中国投資有限公司(CIC:2007年9月設立、推定運用総投資額は2000億ドルで世界第5位)を通じて、米国債券 のみならず、一部優良企業への投資も行っている。

 韓国も韓国投資公社(KIC:2005年7月設立、総資産200億ドル)で外貨準備を同様に運用している。両国の事例も参考に、日本版SWF(Sovereign Wealth Fund)の設立、もしくは、少なくとも外貨準備の運用方法の多角化などを検討することを求めたい。

 以前から田村耕太郎元議員が熱心に日本版SWF(政府系投資基金)の設置に向けて動いてきたが、残念ながら未だ実現に至っていない。「日本政府が借り入れたお金を投資に回すのか」という批判もある。だが、100兆円の外貨のうち、10%の10兆円だけでも良いのだ。これが実現できると、日本への注目度は各段と上がる。外貨を戦略的に外交パワーに繋げる方策として、一番分かりやすい方法だ。是非実現に向けて動いてほしい。

 一方、日本が持つ世界最大の基金年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の改革は一定の進展を見せている。GPIFは、公的年金積立金の7割にあたる厚生年金保険・国民年金、総資産約131兆円を運用している。

 2014年末、厚生労働省は、GPIFの分散投資を進め、国債に大きく偏っていた運用から株式の比率を引き上げる基本ポートフォリオの見直しなどの改革を行い、国内株式での運用比率の目安を12%から25%に大幅に引き上げる決定をした。また運用のガバナンス体制についても合議制の推進や専門人材の登用などの改革を行い、最高投資責任者(CIO)の職を新設し、初代CIOにはロンドンのプライベートエクイティ投資会社パートナーを務めた水野弘道氏が就任した。

 運用資産が世界最大であるGPIFの影響力増大は紛れもなく日本のパワーの増強につながるものであり、より積極的な投資戦略を通じて投資収益の向上に努めてほしい。

 重要なことは、経済力や資源力を外交上のパワーにしていこうという姿勢である。そのためには、明確なビジョンと戦略が必要となる。政、官、民には知恵がある。必要なのは、リーダーシップである。リーダーシップを発揮して、会議体制を創り、そこに強い意思を浸透させれば、動き始めるのだ。是非一体となって行動していこうではないか。


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