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Jun 07 / 2013
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現実を直視した安全保障政策の確立を!100の行動23 防衛1

初稿執筆日:2013年6月7日

第二稿執筆日:2015年5月26日

 2013年4月、北朝鮮は日本海側の発射基地に弾道ミサイルを配備するとともに、2007年以降停止していた原子炉を再稼働するとの宣言を行った。これらの行為は6カ国協議と国連決議に明確に違反する行為であり、同国の政治情勢に鑑みるといつ事態が変わってもおかしくない極めて危険な状態であると言える。日本は、こういった不安定で危険な国を隣国に持つということを再認識しなければならない。

 北朝鮮の不安定さの増大に限らず、日本が存在する東アジア地域の安全保障環境は現在その厳しさを増している。中国は日本の尖閣諸島への挑発のみならず、ベトナム、フィリピンとの間でも領有権紛争を引き起こしながら海洋権益の拡大を指向している。急速な軍の近代化もあって、域内の安全保障環境を不安定にし、日本の脅威となっている。

 一方、北東アジア地域の平和と安定を維持する存在であった米軍のパワーが相対的に後退しているという事実も、日本の安全保障にとって厳しい現実である。私たちはこうした冷徹な事実を直視して、如何に日本の平和と安定を確保していくかを考えなければならない。

 日本は第二次世界大戦後、防衛については基本的に抑制的な姿勢を維持してきた。しかし現実は甘くはない。私たちの隣国は容赦なく自国の権益を拡大しようとしているのだ。私たちはそろそろ、自分の国は自分で守るしかないという現実を直視し、国の防衛という課題から目を背けず、新時代の安全保障政策に正面から取り組む必要がある。

 そういった観点から、今後取り組むべき「行動」について以下の提言を行う。

国家の安全保障戦略の策定を!【済み】

 日本には、国家の安全保障戦略が存在しない。防衛力整備に関して、防衛大綱と中期防が策定されているが、米国が公表しているような「国家安全保障戦略」は存在しないのだ。日本には、1957年に定められた「国防の基本方針」と1987年の閣議決定(専守防衛、軍事大国にならない、文民統制の確保、非核三原則のいわゆる四方針)が、国家の安全保障と防衛に関する基本方針として存在するのみであり、その後の改訂はなされていない。

 しかし、日本が専守防衛を定めた冷戦時代と異なり、今や世界の安全保障環境は大きく変化し、いかなる国家も一国のみでは平和や安定を維持できなくなっている。日本も日米同盟のみに依存した「一国平和主義」を続けることは不可能だ。

 私たちは、「一国平和主義」を捨て、平和を積極的に創る国家として、東アジア地域と世界の平和に貢献する国家となるべきである。そのことが翻って日本の平和と繁栄にも直結するからだ。

 このため、制定以来改訂されていない「国防の基本方針」の改訂を行い、積極的に世界の平和構築に貢献する国家としての新たな安全保障戦略を政府として定め、広くかつ根強く国民と国際社会に対して発信することが必要である。

 「100の行動」による問題提起以降、安全保障に関する活発な議論が行われ、新たに設置された「国家安全保障会議(NSC)」の決定を経て、「国防の基本方針」にかわる我が国の安全保障政策に関する最高指針として、2013年12月に「国家安全保障戦略」が閣議決定された。

 「国家安全保障戦略」は、我が国の国益を長期的視点から見定めた上で、外交政策及び防衛政策を中心とした国家安全保障に関する基本方針を定めたものとなっており、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していくことを基本理念として明らかにしている。日米同盟の強化とともに、我が国自身の防衛力について国家安全保障の最終的な担保であるとの位置づけを明らかにし、総合的な防衛体制を構築することとしている。

このような政治の動きは積極的に評価し、今後も我が国の置かれた厳しい安全保障環境を直視した防衛政策が進められる必要がある。

集団的自衛権の行使を認め、国益を守り、世界の平和に貢献せよ!【一歩前進】

 日本は現状において自国を自国のみで守る能力を保持していない。例えば、弾道ミサイル防衛においても米国のSEW(Shared Early Warning、早期警戒衛星)情報がなければ、システムは機能しない。核兵器も保有していない。この現状において、日米同盟が日本の安全保障の基軸であることは言うまでもない。
 これだけ重要なパートナーであり、現状において国を守るために無くてはならない同盟が日米同盟であるにもかかわらず、日米は軍事的にもイコール・パートナーとはなっていない。

 たとえば、日本防衛事態に至る以前の段階で、ミサイル発射に備えて日米共同オペレーションに従事する米艦に攻撃が仕掛けられた場合に、これを自衛隊が防護することは今の憲法解釈では認められない。また、弾道ミサイル防衛において、日本のイージス艦が米国領土に向かう弾道ミサイルを撃ち落とすことも、従来の憲法解釈では認められない。

 憲法論からスタートして「これはできる」「これはできない」という議論はもうやめるべきだ。そうではなく、そもそも日本の国益のために何が必要かを考え、現実を直視し、日本の国益を守るために政府として正面から集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈を改めることを求める。 

 集団的自衛権の問題に関しても大きな前進があった。政府は2014年7月、集団的自衛権を使えるようにするための憲法解釈の変更を閣議決定した。

 この解釈変更の閣議決定では、我が国の置かれた安全保障環境の変化などによって「(アメリカなど)他国への武力攻撃でも、わが国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」と指摘し、集団的自衛権の行使が「憲法が認める必要最小限度の武力行使」に含まれるとした。

 集団的自衛権行使の要件として

1)密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、国民の生命・自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある

2)国民を守るために他に適当な手段がない

3)必要最小限度の実力行使

の3要件を規定し、これを満たした場合の武力行使は「憲法上は我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置」とし、国際法上は集団的自衛権が根拠と明記した。

 これによって、「100の行動」でも指摘した日本防衛事態に至る前の段階での第三国の米国艦船への攻撃に対する防護や、米国領土に向かう弾道ミサイルの迎撃などを含めた、集団的自衛権を使う必要がある事態についても対処が可能となった。政治の「行動」を率直に評価しよう。

国際平和協力に積極的に参加できる体制を!【一歩前進】

 世界の安全保障の環境が大きく変化した現在、日本は積極的に国際貢献を果たす必要がある。国連の国際平和協力活動への参加は2007年の自衛隊法改正により自衛隊の本来任務となり、実際、日本はこれまでカンボジアPKOを皮切りにイラクやインド洋への派遣といったPKO以外の任務にも参加するようになった。しかし、世界における国際平和協力活動のニーズが変化し、破綻国家の再建までもが課題となった現在において、日本の国際平和協力の基本原則であるPKO 参加5原則は、もはや時代の流れに適応できていないと言えるのではないか。

 PKO参加5原則は、1992年に国際平和協力法が制定された際に、国連PKOミッションの形態をもとに作られたものであり、1)停戦合意、2)受け入れ同意、3)中立性の3つの原則は、紛争当事者に該当する明確な主体の存在を前提としている。さらに、4)上記前提が崩れた場合には撤収することが出来ること、5)武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること、である。

 しかし、脆弱国家や破綻国家が活動対象の場合、その主体自体が存在しないことがある。

 破綻国家の復興といった「国づくり」は、むしろ日本が得意分野として積極的に国際貢献すべき分野である。防衛以外の分野、たとえばNGOとの連携やODAの効果的な運用も含めて、破綻国家や脆弱国家の再建、大規模自然災害支援など、単なる平和維持活動ではなく、平和創造のための文民両方の協力を行うのだ。

 したがって、日本は、これまでのようにPKO参加5原則に基づいて個別の事案ごとに特別措置法をその都度制定して自衛隊の派遣を決めるという方法を改め、国際平和協力法を全面的に改正し、国際平和協力に関する包括法を制定し、タイムリーで積極的な自衛隊による国際協力活動への参加と破綻国家の再建等を含めた幅広い国際協力を可能とすべきである。

 2015年現在、政府が国会に提出した一連の安全保障法制改正法案では、自衛隊が、その都度「特措法」を制定しなくても、常に他国軍を「後方支援」できるようにするための新たな「恒久法」の制定が含まれている。現段階では「後方支援」に限られてはいるが、積極的に世界の平和構築に貢献する積極平和主義のもと、自衛隊の海外活動の範囲が広げられるべきだ。

海外における自衛隊の武器使用基準の見直しを!【一歩前進】

 2013年1月に起こったアルジェリアの邦人人質拘束事件は痛ましい事件であった。この事件を受けて、政府は災害や騒乱などに巻き込まれた在外邦人の陸上輸送を可能にする自衛隊法改正案を閣議決定した。この改正案の成立は切に望むところである。(2013年11月成立)

 しかし、今回の改正では、諸外国と比べて極めて制限されている武器使用基準の緩和は見送られてしまった。

 武器使用基準に関しては、国連平和維持活動協力法でPKOに参加する要件として「要員の生命保護のための必要最小限の武器使用」とされ、2001年の法改正で「自己の管理下に入った者」や「武器、弾薬などの防護」のために武器が使えるように基準が一段階緩和された。しかし共同で任務に参画している他国軍への攻撃に自衛隊が反撃することや、離れた場所にいる文民を保護するために駆けつけて武器を使うこと(駆けつけ警護)は認められていない。

 このことは、活動に参加する自衛官に多大な負担と行動の制約を与えている。今後、日本が国際協力活動への参画を拡大する方向と合わせ、極めて厳しい武器使用基準も国際的なスタンダードに合わせて改めるべきである。

 2015年現在、政府が国会に提出した一連の安全保障法制改正法案では、PKO協力法の改正によって、駆けつけ警護や任務追行のための武器使用を解禁し、自衛隊の武器使用基準を国際的なスタンダードに合わせる法改正が含まれている。政府の努力を評価するとともに、国会における議論を経て是非とも成立させたい内容だ。

国民的な憲法論議を!

 防衛に関する「行動」を考察していくと、最後は憲法9条の問題に突き当たる。世界の安全保障の環境が大きく変化した現在、いかなる国家も一国のみで平和を維持することは不可能となっている。日本もいつまでも「一国平和主義」を続けることなど不可能だ。私たちはそろそろ冷徹な現実を直視し、戦力を放棄し、交戦権を否定する理想主義に頼ることなく、自ら自国を守り、かつ世界の平和に貢献する普通の国家として、憲法9条の改正を国民、メディアを含めてタブー無く議論すべき時に来ているのではないか。

尖閣諸島における毎日の様に発生している中国による領海侵犯。竹島を不法に占拠されたままの状態。北朝鮮の核武装とミサイル発射能力。これらの現実を直視した上での、冷静な憲法改正及び防衛論議が必要とされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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