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Sep 06 / 2013
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日銀 「異次元の金融緩和」の次には「異次元の政策出動」を! 100の行動34 金融3

初稿執筆日:2013年9月6日

第二稿執筆日:2015年9月17日

  「異次元緩和」と呼ばれる日銀の量的質的金融緩和はアベノミクスの柱だ。日銀による異次元の金融緩和の行く末がどうなるか、数年後の日本経済がどのような方向に進むかについて確かなことは、いまだ誰にも分からない。しかし、一旦、この政策に舵を切った以上、政府は金融政策、経済政策を一体として日本経済を破綻させず、成長軌道に押し戻す責任がある。

 今は、長く続いた日本経済のデフレから脱却する最大のチャンスだ。政府・与党には、今後、揺るぎないマクロ経済運営が求められる。

 まず、日銀の政策変更に関しておさらいをしてみたい。2013年4月、日銀の総裁が白川氏から黒田氏に変わって初めての政策委員会・金融政策決定会合において、「消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する。」ことを決めた。このため、「マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買い入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行う。」ことを宣言した。まさに「白」から「黒」へとオセロゲームで石の色が変わるような日銀の金融政策の転換であった。

 これまで日銀は、2006年3月に0~2%の物価安定の「理解」(Understanding)という考え方を導入し、2012年2月には一歩踏み込んで0~2%、当面は1%程度という「中期的な物価安定の「目処」(Goal)を示した。加えて、同年10月には政府との「共同文書」という形を取り、「消費者物価指数の+1%を目指して、強力な金融緩和を推進する」と宣言していた。

 これが自民党への政権交代後の2013年1月に物価安定の「目標」(Target)2%を導入し、総裁交代とともに、

○インフレターゲット「2%」の達成期限を「2年」とし、

○マネタリーベースを2年間で「2倍」にし、

○国債保有額・平均残存期間を2年間で「2倍以上」にする、

という具体的な手法を一気に投入した形だ。これまでの伝統的な日銀による金融政策と一線を画す巨大な緩和政策である。

 まず、マネタリーベース・コントロールを日銀が採用したのは初めてだ。これまで日銀は、金融市場調節のターゲットを「金利」(無担保コールレート)とし、その操作を目標としていたが、今回の政策はマネタリーベースそのものをターゲットにし、「世の中に出回るお金の量(マネタリーベース)を年間60兆~70兆円増やす。」ことを決めた。

 これは大幅な政策変更である。これまで日本のマネタリーベースは2012年末で138兆円だった。デフレ脱却のため、これまでも日銀は最大限の努力をしてきたと主張されてきたが、マネタリーベースは2007年末の91兆円から5年間で50兆円も増えていない。これを2013年末に200兆円、2014年末に270兆円と、「2年で2倍」にし、マネタリーベースをGDPの約6割まで増やす。米国のマネタリーベースはGDPの2割弱であることを考えれば、極めて大胆な緩和策だ。

 次に、長期国債の買い入れ拡大と年限の長期化だ。長期国債の残高を2年で2倍にするため、年間50兆円の国債を買い入れる(その後2014年10月の追加緩和策で、国債の買い入れは年間80兆円へと拡大)。このため、買い入れ対象の国債を最長の40年債を含む全ての国債にしたうえで、買い入れの平均残存期間もこれまでの3年弱から7年程度と倍にした。これによって、日銀のバランスシートで、長期国債は2012年末の89兆円から、2014年末までに100兆円増えて190兆円となる見込みだ。このために、日銀はこれまで堅持してきた「銀行券ルール」も一時停止する。

 さらに、資産価格を上昇させるため、ETF(上場投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)の買い入れもそれぞれ年間1兆円、年間300億円増やすことも決定された。これまでも社債はCPに加えてETF、J-REITも日銀による買い入れが一定程度行われてきたが、とにかく日銀が「なんでも買い取る」という形をとることで徹底的に市場にマネーを供給する姿勢を強調している。

 これらの日銀の緩和政策は、伝統的な金融政策と一線を画した大胆な緩和政策だ。問題は、異次元緩和によって流出したマネーがどこに流れていくかだ。今、日本国内では、日銀の大規模国債引き受けによって銀行が国債を買えなくなったため、アジアを中心とした海外のボンドにマネーが回っているのが現状だ。

 つまり、アベノミクスの結果、マネーが国内ではなく、海外に大量に流れ込んでいるという結果を引き起こしているのだ。異次元の金融緩和の結果が海外へのマネーの流出では意味が無い。異次元緩和の結果として、異次元の内需喚起を起こさなければならない。大量に国内市場に出回ったマネーが、リスクマネーとして新たな投資を呼び起こし、新たな需要を作り出すといった実体経済の好循環を作り出すことが必要だ。

 このため、政府は、日銀による大規模緩和とセットで、国内にマネーが循環するよう実体経済を刺激する経済政策を実行し、金融緩和のインパクトを最大化することが必要だ。

金融緩和のインパクトを最大化するための政策実行を!

 「経済政策を実行し、金融緩和のインパクトを最大化することが必要だ」と述べたが、これまで幾度となく繰り返されてきた、政府による「総合経済政策」「成長戦略」「緊急経済対策」等の焼き直しでは意味が無い。本丸の規制改革に踏み込み、医療、農業などの岩盤規制の緩和や、政府の保有するビックデータの開放といった改革による「新たな市場を生み出す」経済政策でなければならない。

 具体的な行動については、経済産業省の部で、行動7から14まで具体的に述べてきたので参照してもらいたい。(注)

 原発を再稼働し安価で安定的なエネルギーを供給し、TPPを推進して広い市場を対象にビジネスができるようにし、6重苦を解消することによりライバルである中韓に比べて遜色がない競争条件を整えて、ベンチャーを生み出す生態系を作る。そして、政府のIT化を進め、知財を守り、日本のコンテンツやインフラを世界に売り込む事が重要である。

 日銀の異次元緩和によって生み出された猶予期間に、規制緩和によって新市場を生み出し、国内にマネーが好循環し実体経済を向上させる成長戦略を成功させることが政府の責務である。

リスクに備えよ。臨機応変な政策変更が可能な体制を!

 巨額の国債買い入れ、大規模なマネーの供給というこれまでにない金融緩和の結果、将来の日本経済にどのような影響を与えるかは、誰にも分からない。好影響の場合もあれば、悪影響の場合もあるかもしれない。異次元緩和政策によってマネーの量は、138兆円から270兆円に2年で2倍になり、2015年8月現在では323兆円にまで拡大している。未知の領域に足を踏み入れているといっていい。政府・日銀は、どういった状況にも対処できるよう、起こった事態に対して臨機応変に政策変更できる体制を取っておかなければならない。

 特に、注意すべきは、金利の上昇である。マネーの供給が増えると通貨の価値が下がり、物価や資産価値の上昇を招く。現在、株価や不動産価格の上昇は既に顕在化している通りだ。今後は、物価に波及するであろう。

 異次元の金融緩和の目的は、デフレ脱却と日本経済の成長軌道への回帰だが、経済が良くなると、資金需要が上がり、当然金利も上がる。2%のインフレ目標を立てている以上、市場での名目金利が上昇するのも当然だ。

 しかし、長期にわたって低金利に慣れてきた日本経済にとっては、乗り越えなければならない課題が発生する。金利が上昇すると、国債の暴落を招き、日本の金融機関に膨大な含み損を発生させる可能性がある。

 また公的部門において課題は大きい。平成25年度の新規国債発行額は44.2兆円。一般にはあまり知られていないが、財務省は新規国債の他に、既存国債の「借換債」を毎年発行しており、その額は平成25年度見込みで115.5兆円である。つまり、毎年160兆円以上の国債を市場に消化させることによってこの国のファイナンスはギリギリ成り立っているのだ。

 毎年160兆円の国債を発行しているわけだから、金利が1%上がれば、毎年の国債利払い負担は1.6兆円増える。2%の金利上昇で3.2兆円であり、消費税1%分の税収2.5兆円が簡単に吹き飛ぶ計算だ。政府は利払い負担の急増による財政収支の悪化に対しても十分にマネージする必要があろう。

 そのためにも、金利動向を注視しながら、日銀は市場参加者との対話強化が必要だろう。

 日銀は、市場参加者との頻繁かつオープンな意見交換の場を積極的に設け、現在の日銀の政策および将来の政策変更の際のメッセージを正確に市場に伝える準備をしておかなければならない。

出口戦略に備えよ!

 日銀が、異次元の金融緩和に踏み込んだことは、将来のどこかで、異次元緩和の出口戦略に必然的に直面することを意味するわけだ。

 米国の金融緩和政策についても出口戦略の動向が市場を揺さぶっているのは周知のことだ。米国の景気回復が進むことを意味する指標が出てくると、量的緩和の出口戦略に米国連邦準備制度理事会(FRB)が踏み出すのではないかとの予想から、米国株価が低下する。厳しい金融引き締めが株価を下げるとの予想からである。反対に、景気回復が遅れるような指標が出て来ると、出口戦略の時期が遅れるとの予想から、株価が上昇するといった動きだ。

 日銀の政策目標はデフレ脱却だが、デフレ脱却が見えて来た時点で、米国のような市場の動揺が生じ得ることは確かだろう。しかも、今の日銀は米国よりも大規模な金融緩和を行っており、これを平時の金融政策に戻すことは、これもまた異次元の政策変更であり、市場の大きなかく乱要因となろう。

 今はまだ出口戦略を表立って議論するタイミングではなく、デフレ脱却の流れを経済全体に拡げることに専念することが必要だが、政府・日銀には、近い将来の出口戦略に関して、米国の政策や過去の経験も含めて周到なシミュレーションと準備を進め、いかなる事態にも対応する政策を用意しておくことが必要だ。

 冒頭に述べたとおり、「異次元の金融緩和」政策に舵を切った以上、政府は金融政策、経済政策を一体として日本経済を破綻させず、成長軌道に押し戻す責任がある。つまり、今まで述べてきたとおり、「異次元の金融緩和」の次には「異次元の政策出動」を行う必要があるのだ。

 

(注)

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