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Sep 12 / 2011
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2020年までに世界一ネットを活用している国となろう! 100の行動11 経産5

初稿執筆日:2011年9月12日
第二稿執筆日:2015年3月8日

 「IT元年」と言われた2000年にIT革命という言葉は流行語大賞をとり、翌2001年1月に「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」が施行された。今世紀に入りIT技術が身近となり、多くの情報へのアクセスが可能となったことで生活様式は劇的な変化を遂げた。さらに今、それらの技術は通信を変え、産業を変え、教育を変え、防衛を変え、社会構造そのものを大きく変え続けている。そしてスマートフォンの登場が一人ひとりの暮らしそのものに変化をもたらしている。 変化の加速器の役割を果たしているのが、技術をフル活用し「IT×社会課題」に挑み続けている若きベンチャー企業たちである。たとえばLINEはコミュニケーションを変え、ユーザベースは新たなメディアを作り出し、ランサーズはITを使い地方に住む人々の働き方を変革し、オイシックスは農家と食卓の距離を縮め日本の農業の再生に貢献している。また、スマホアプリのマネタイズについて、日本は黎明期に米韓をおさえ1位にランクインし、市場の中で強さを発揮している。

 日本経済の成長にとって、ソーシャル(S)、モバイル(M)、ビッグデータ・アナリティクス(A)、クラウド(C)、セキュリティ/センサー(S)=SMACSの最先端のポジションをとり、IT技術やロボット、センサー、人工知能などを活用したイノベーションによる産業創生は大きな起爆剤となる。同時に、高齢化や過疎化、人口減少などの課題先進国としての日本に具体的な解決策を提示してライフイノベーションを起こし続けることは活力を維持するために欠かせない。

 一方、公共領域のIT化については、わが国は長い間、他国の後塵を拝してきたが、この数年で飛躍的に変化している。「国連世界電子政府ランキング」では、日本は2010年に17位(1位韓国、2位米国、3位カナダ)、2012年に18位(1位韓国、2位オランダ、3位英国)であったものが、2014年は一気に6位(1位韓国、2位オーストラリア、3位シンガポール)まで跳ね上がった。

 IT基本法第20条では、「国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化、効率化および透明性の向上に資するため、国および地方自治体での行政の情報化に必要な措置を講じなければならない」と規定され、実に15年の月日が流れてようやく動き出した感覚だ。1)電子政府の基盤となる国民IDの未導入、2)「利用者視点」が欠如したインフラ重視のIT化、3)政府の推進体制が抱える問題などが大きな要因として指摘されてきたわけだが、インターネット選挙の導入が遅れたことが示しているように、政治のリーダーシップが欠如して遅々として進まなかったのだ。

 これまで電子政府やIT化の議論は、高齢者を中心としたデジタルデバイドを指摘する声と個人情報の保持を過剰に不安視する声が大きく、その進展を妨げてきた。もちろん最大限の配慮は必要ではあるが、今こそ我が国はデジタルスタンダードへと大きくかじを切る必要がある。すべてのサービスをIT化、デジタル化、ネット化させることを基本として社会構造の再構築にあたるべきだ。

 過去の常識を打ち破り、本物のIT革命を実現することによって社会構造を変革し、ビジネスを生み、暮らしを豊かにすることをさらに追求したい。

マイナンバーを使いこなし行政手続きを簡素化せよ。

 長年の政府のIT化の大きなボトルネックは、本人認証の共通基盤である、国民IDが無いことであった。日本でも国民IDを可及的速やかに導入すべきであると100の行動やG1サミットでは繰り返し述べてきたところだ。民主党政権下で議論が始まり2013年5月にマイナンバー関連4法が国会で成立し、本格的な準備がスタートした。2016年1月の税と社会保障分野での運営開始に向けて、いよいよ本年10月には国民一人ひとりに国民番号が付与される。かつての住基ネットの失敗を繰り返さないためにも、理解の促進と活用に向けた準備を怠らないことが肝要だ。

 実際に、これまで国連の世界電子政府ランキングで上位にランキングされてきた国では、ほとんど「国民ID」もしくは「社会保障番号」が導入されている。その際には、個人情報保護の観点から第三者機関の創設や、行政機関が保有する個人情報について、本人が内容を確認できる仕組みの整備などが不可欠である。電子政府先進国の韓国では、自宅のプリンターで交付可能な証明書は6種類(住民票など)もあるし、ライフイベント(引っ越し・結婚・入学・退職など)を含めた、ほとんどの行政手続きがワンストップ化されているのが実情だ。日本と韓国は、戸籍制度・印鑑登録制度・国民年金制度などの諸制度が似通っている。参考になる点は多い。

 マイナンバーが導入されることにより、所得税の確定申告、年金、雇用保険などの手続きが簡素化される。社会保障が一元管理され、また所得が捕捉されるようになれば給付漏れや過払いのようなリスクを回避し公正で信用される制度になり得る。また、子どもたちの予防接種や大人たちの検診などの履歴を一括管理することで、医療の無駄を省き、無駄な投薬を防ぎ、さらには健康管理につなぐことが可能だ。

 個人情報を心配する声は聞こえてくるが、情報の取り扱い状況を監視・監督し、関係機関への立ち入り検査権限も持つ第三者機関として「特定個人情報保護委員会」が設置された。行政機関が保有する個人情報について本人による内容確認を可能とすることで、制度への信頼を確保するような取り組みも進められる。過剰に反応することは社会全体にとって良いことではない。

 一方、そもそも行政手続きは面倒だというイメージがある。同じことを何度もそれぞれの部署で異なる様式の紙に書いて提出しなければならないなどという手間は民間では考えられない無駄である。国民が各種行政手続の申請などに際し、既に他の行政機関が保有している本人情報については、原則として申請用紙の記載・添付を不要とし、デジタルでの手続きをスタンダードと位置づけるべきである。国民の利便性を向上させるために『個人情報二重請求禁止法(仮称)』をつくりたいぐらいだ。

 千葉市の熊谷市長はオンラインによる行政のさらなるスリム化を進めるために、根拠なく習慣化してきた印鑑証明至上主義を見直したいと問題提起している。さらには、もうすでにマイナンバーカードの発想そのものが古く、偽装やなり済ましを防いだ安全な運用のためには生体認証こそ重視すべきだと、一歩先を行く指摘もしている。大いに賛同し注目したいと思う。

 さらに政府は1)各省庁間での行政手続きの電子化・ペーパーレスを進め、2)地方公共団体と政府の行政文書、予算書、公会計資料の統一化などを実現し、3)更には、全ての企業・法人とのやりとりもオンラインで 実施可能とすべきである。また従来の閣議や国会審議も「電子閣議」・「電子国会」に移行させて、立法府(国会議員)が率先垂範し、審議のスピードアップや、ペーパーレス化によるコスト削減に取り組む強い決意を国民に示すことを期待したい。日本全体の生産性を上げるためにも、積極的に政府のIT化を推進させ、通信・IT両分野での日本の優位性を世界に示せるようにしたいものだ。

 将来的には、国政選挙・地方選挙などにおける、電子投票も可能にすべきであろう。インターネット選挙はG1政治部会のメンバーによる超党派の取り組みが実を結び2013年に公職選挙法を改正し解禁された。まだまだ課題はあるが、ようやく一歩を踏み出したことは間違いない。マイナンバーと生体認証による個人確認さえ徹底できれば、投票率向上の切り札として、選挙改革の本丸である電子投票が可能になる。政治的抵抗を乗り越えて一気に実現するべきだ。

 なお、詳しくは100の行動72で述べるので参照されたい。

中央政府のみならず、様々な自治体で民間からCIOを招聘せよ!【一歩前進】

 官民を超えたIT化の推進の司令塔として、民間から政府CIO(最高情報責任者)を招聘して、地方自治体を含めた行政全体のIT化に係るグランドビジョンを整理し、情報戦略とインフラ構築への投資、セキュリティを統括し、予算や推進権限を付与することがまず肝要だと、これまで100の行動では指摘してきた。政府は2012年8月には、初代CIOとしてリコージャパン前会長の遠藤紘一氏を任命し、2013年には内閣法を改正し法律上の根拠が付与した。遠藤氏が陣頭指揮を執る政府CIO室にはヤフーの楠正憲氏をはじめとする25名のCIO補佐官等55名のスタッフが官民・省庁を超えて専門家集団として活躍し、マイナンバー制度の構築や、地方も含めた政府全体の最適化を進めている。彼らの存在が国連電子政府ランキングの順位を押し上げてきたことは明らかだ。

 世界に目を向けてみよう。インドは政府関連機関である政府ITの総責任者(大臣相当ポスト)に、インフォシス社の共同会長ナンダン・ニレカニ氏を起用するなど、積極的に民間の知恵を導入してきた先駆者だ。僕はナンダンとは何度も会っているが、直前までインフォシスのCEOとして、グローバルカンパニーの指揮をとってきた。彼のような存在が今日のIT大国インドを作り上げたといっても過言ではないだろう。

 一方、地方政府を見てみよう。これまで、地方自治体の情報システムは1700を超える自治体の数と同じだけバラバラに構築されてきた。その結果、市町村の合併や自治体横断型の事業を推進するに当たっては、システムの統合が課題となり、莫大な無駄な税金をつぎ込んできた経緯がある。さらには、そのシステムが複雑で汎用性のないレガシーシステムであることから、システムの改築や維持管理のためのコストはブラックボックス化し、ベンダーに言われるままに負担をしてきた。クラウド化を進めオープンガバメントを実現するための専門家が地方自治体にも必要になる。これらのことが地方政府のIT化を阻害してきた。中央政府のみならず、地方自治体のCIOのポストに専門性の高い民間人を積極的に任用すべきである。

 「100の行動」では、ワークス・アプリケー ションズの牧野正幸氏の様に、ITソフトウェア・ベンチャーを立ち上げた経験者をその職に薦めたい。IT産業というと、基盤・製品ソフトウェア開発を主に指すが、日本ではその大半がシステムや人材派遣などのITサービス業である。今後、クラウド化が進展し、ソフトウェアのサービス化(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)が更に進むと、ソフトウェアのノウハウを持った人が必要になる。また、大学院などの高等教育機関において専門人材を育成することも必要だろう。

 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2012」によると、1000人以上の企業の86%にはCIO相当の役員がいるが、10年以上IT業務に従事した人は17%程度にすぎず、49%は経験がない人が当たっているという。専任は13%にすぎない。CIOに、より専門性の高い人を選任し、官民を超えて人材を流動させ、最新の世界動向を把握しながらトップダウンで強力に施策を推進していくことは、わが国がIT先進国としての地位を築いていくためにも非常に大きな課題なのだ。

情報の公共財化を進め、官民のすべてをつなげよ!

 官民全てを繋げることで行政情報の公共財化(社会情報資源化)を期待したい。マイナンバーを通じて得た情報をビッグデータ化して解析することにより、人口動態を明らかにし、都市計画や交通体系の整備、正確なニーズを把握しての製品開発などに役立てることができる。

 前述の熊谷市長は「産業戦略としてマイナンバーをとらえるかどうかが重要」と指摘しているが、まさに正鵠を射ている発言であり、頼もしい。データは行政にとっても民間にとっても重要な資源であることから、これらを行政サイドが独占して持つのではなく、積極的に開放し活用を進め、サービスの向上と新たな産業の創出の二兎を追う姿勢が求められる。

 行政が保有する統計・調査などの情報は「公共財(社会情報資源)」として位置付け、個人情報の保護を担保したうえで原則すべてをインターネットで容易に入手可能とし、ビジネスに活かすことが重要だ。志あるベンチャーはその情報の中で生まれ、思考し、データからニーズをつかみ、ライフイノベーションを牽引するサービスや製品を創造し続けるだろう。大きなビジネスチャンスがここには眠っている。これまで官が独占してきた「公共」の領域を、官も民も入り混じる新たな関係性の中で支えていく。そのためにITを活用しながらシームレスに官と民をつなぎ合わせることが必要だ

官民を挙げてIoT の流れを拡大し、さらなるイノベーションを起こせ!

 昨今IoTという言葉をよく聞くようになった。Internet of Things、つまりモノのインターネットだ。あらゆる機器がインターネットにつながり、それらが情報を自由にやり取りする。このことが新たなサービスを創造し、ビジネスを生みだしている。課題先進国と言われる日本が最新技術を使って暮らしを豊かにし、課題を克服する先進事例をつくっていくことができれば、世界市場に対しても大きな強みとなる。

 IoTの進展にはセンサー技術の高機能化が関係している。一例として2014年に開催したG1ベンチャーにて孫泰蔵氏はフィンランドのゴミ処理ベンチャーの話を紹介した。町中のゴミ箱にセンサーを付けてデータを取り分析をすることで、いつゴミがいっぱいになるかを予測してゴミ収集車を計画的に走らせ、ゴミ収集車両を1/3まで減らし、コストダウンに貢献しているという事例だ。孫氏は「IoTの時代、公共サービスでベンチャーがイノベーションを起こす事例が増える」と指摘する。

 その他にも、コマツが自社で販売した世界各地の建設機械にセンサーと通信モジュールをつけ、稼働状況を遠隔地で管理し、盗難対策を実現し、さらに消耗品の状況を合わせて把握し、新たな販促につなげるなどの付加価値をつけて利用していることが知られている。また、最近注目されているスマートホームは家庭内の電力を制御・最適化しながら、個々人のライフスタイルに合わせた心地よい暮らしを提供してくれる。

 これらの技術は、省エネ、オンデマンドバスや渋滞予測をはじめとする交通課題の解決などの都市政策に応用することが可能だ。また高機能なセンサーを搭載したウェアラブルデバイスを活用したバイタルチェックや見守りなどのサービスは、これからの高齢社会を支える基盤となる。

 みずほ銀行の試算によれば、2025年には医療や介護が中心となる高齢者市場は100兆円規模の大きなインパクトを与えるといわれている。さらにIT専門の調査会社IDCによれば、世界のIoT市場規模は2013年の1.3兆ドルから2020年には3.4兆ドルまで急成長するという。この市場で日本が成功をおさめるために、ビッグデータを活用した技術開発を進め、国策として本腰を入れ官民あげて積極的なチャレンジをしていくべきだ。

ロボット・自動運転と人工知能などの分野で世界に挑め!

 世界でのロボット開発競争は熾烈を極めているが、日本で注目されるのは筑波大学の山海教授が率いるロボットベンチャー「サイバーダイン」だ。医療用のロボットスーツHALは2013年にEUでの医療機器認証を受け、2014年には上場を果たした。オムロンとの協業によるバイタルセンサーの活用にも着手している。

 自動車の無人運転も今後、大きな市場となる。世界中で無人運転自動車の開発競争が加速している。先行しているのは2010年に開発に着手したGoogleだ。これまで約48万キロメートル以上を自動走行する実績を持っている。強みはグーグルが誇る「人工知能(AI)」の最先端ノウハウだ。米国ではカリフォルニア州やネバダ州が後押しをし、公道走行の実績を積み重ね、精度を上げ続けている。また、Appleも参入したという報道がある。従来の自動車産業ではなくIT系のシリコンバレー勢が中心となって巨大な資本を背景に、運輸革命、無人革命を起こす旋風を起こしていることが特徴的だ。日本では2015年3月に石川県珠洲市において初めての公道走行実験がようやく行われた。トヨタ、日産、ホンダなどの各社がIT勢とどのように組み巻き返しを図るのか、自動車産業を強みとしてきたわが国にとって非常に重要な局面だ。

 無人飛行機のドローンも空の産業革命として注目されている。人の立ち入ることのできない災害現場や過酷な自然環境の中での活用や無人の空中農薬散布をはじめ、最近ではAmazonがドローンを使った無人配送を2015年に開始すると発表するなど、身近な生活領域にまで活用の可能性が広がっている。高性能なGPSを搭載することで、自動でどこへでも行けるようになった。空路は陸路に比べてはるかに自由度が高いことから、今後、爆発的にその活用の幅が広がっていくことだろう。国内では、千葉大学発のベンチャー自律制御システム研究所が開発し、2015年4月には量産体制に入ることが発表されている。

 ロボット、自動運転、ドローンのそれぞれの実用化については、法律や規制といった共通の壁が存在する。ロボットが医療機器として活用されるには治験の問題があり、自動運転が実用化に向けた取り組みを進めるには公道を使った実証実験を行うための、国や自治体の理解と道路交通法上の特区を使うことが有効だ。航空法はこれまで無人飛行機などについては規制の対象外であったが、政府は事故の危険性などを考慮して、ドローンの商業利用について規制をかける。この壁を以下に突破していくかが、わが国の新たな産業創出の大きなカギとなる。

 一方、安倍政権は成長戦略の柱の一つにロボットによる「新たな産業革命」を掲げている。ルール作りではロボットや無人機による事業機会を損なうことなく、むしろ官が民を応援するような仕組みづくりとするべきだ。

 情報セキュリティや安全性は、当然何よりも優先される事項である。このことは社会を挙げて十分な対応と対策を行っていく必要がある。IT技術を活用した新産業の創出と育成には、政府による自由と規制のバランス感覚が最も求められる。今こそ、官と民が車の両輪となり、効率的な行政と快適な暮らし、さらには社会課題の解決と経済成長へとつなげる一石四鳥の大胆な取り組みを求めたい。

 さて、この行動で見てきた通り、日本が2020年までに世界一ネットを活用している国となるためには、マイナンバーの活用、政府・自治体のCIO機能の強化、官民を全てネットで繋げて、IoT(モノのインターネット)を活用し、人工知能・ドローンそしてロボットを活用することである。

 そのことにより、2020年の東京オリンピックでは、世界の観光客の目に、ネット大国の日本を印象づけることになるであろう。その目標に向けて、官民で力を合わせていきたい。


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